その10:ゲーム音楽を“音楽”として残したい
斉藤 | 前回のVGOさんとの対談でも触れましたが、 僕は、今ある芸術をゲーム音楽を通して残せないか、 と考えていまして。 |
菊田 | どういうことですか? |
斉藤 | たとえば、現代音楽の作曲家って いらっしゃると思うんですけど、 僕たちの日常生活では なかなか接する機会がないと思うんです。 |
菊田 | そうですね。 |
斉藤 | 同じ時代に生きる僕たちが聴いたり伝えたりしていかないと 消えてしまうかもしれません。 それより怖いのは、無かったことになるということです。 |
菊田 | 気持ちはよくわかる。 |
斉藤 | 舞台やアートなど、芸術のフィールドで この瞬間にも、多くのクリエイターが 自分の表現で素晴らしいものを創っているのは間違いないです。 ただ、今はポピュラーなものばかりが 残っていってしまう傾向があります。 実際に作品を観にいって素晴らしいなと感じても、 これは時代的に考えると今後残らないだろうな、、 と思うことがすごくあるんです。 これらをなんとか、 今、盛り上がりを見せているゲーム音楽に 取り入れられないかと考えています。 そうすればいろんな人が観て、触れて、 元の芸術もキチンと観られるかもしれません。 ゲーム音楽を介して、 将来、無くなってしまうかもしれない芸術を 共に発展させることを、僕はやりたいんです。 |
菊田 | なにもないところから、 芸術は生まれないからね。 いきなり“ボンッ”と出るものではなくて、 みんないろんなものに影響されていると思います。 たとえば今まで僕が聴いてきた音楽は、蓄積されていって、 創った楽曲の中に必ずあるはずです。 いま聴かれていないから 値打ちがないかっていうとそうではなくて、 ものごとが昇華するために歴史があるっていうのは、 すごくいいことだと思う。 |
斉藤 | はい。 |
菊田 | そういったことに触れる機会が増えるのは、 いい作用があるんじゃないかな。 |
斉藤 | 今、ゲーム音楽を聴く人ってすごく多くて 小学生や中学生がそれをキッカケに 音楽を始める人もいるようです。 |
菊田 | いっぱいいるね。 |
斉藤 | けれど、そのルーツまで探ろうとしている人って、 すごく少ないように感じます。 曲を創った人たちにどういうことがあったとか “原点”をしっかりと知ってほしいですね。 それを知らないと薄っぺらくなるといいますか、、 すごく大事なことだと思います。 |
菊田 | ゲーム音楽を聴いて育った子どもたちが、 もう大人になって作曲をしようとしている時代ですからね。 |
岡 | 私はそういった人たちに専門学校で教えたことがありました。 最初に驚愕したのが、 彼らが作ろうと思ったものは、 “ゲーム音楽”だったんですよね。 |
斉藤 | 現代では、ほかの音楽を聴いて、 “ゲーム音楽っぽい”と表現されるほど認知されていますから。 |
TECHNOuchi | 確かに言われてみれば…。 そう言われる機会って今までなかったかも。 |
斉藤 | 僕も作曲してたときに感じたのですが、 バトルならこういう曲だろうと 当てはめて作っていたトコロがあって。。 でも、先ほどのお話に出たように、 ゲーム音楽は、元となるゲームの世界観や意図を 汲み取って創ったものだと考えているので、 ジャンルではなく、たまたま“ゲーム音楽”という 名前がついたと僕は感じます。 |
岡 | そうなんです。 私たちが作っているのは、あくまで“音楽”ですね。 なのでゲーム音楽ばっかりを聴いて取り組むのではなくて もっといろんなものを聴いたり観たりしないと、 “音楽”として違うと思ってしまいます。 やっぱり世代が違うんでしょうか。 |
菊田 | 音楽家にとって、 いろんな音楽を聴くことは非常に大切なことですね。 |
Copyright (c) 2083 All Right Reserved.