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ゲームサウンドクリエイターのあつまり「ゲ音団」との対談

その8:なぜゲーム音楽はここまできたか


斉藤 時代が経っても、ゲーム音楽って
なんでこんなに影響力があるのかと思ったことがあります。

これは、僕の個人的な考えなのですが、
ゲーム音楽は、ノイズがすごく少ないと思うんです。

ポップスとか商業的な音楽って、
どれだけ売らなきゃいけないとか、
その時代の背景とか
いろんなノイズが入ってくると思うんです。

菊田 なるほど。

斉藤 ゲーム音楽は、ゲームに対して
すごい奉仕的なところが魅力的だと思っていて、
主役では決してないですけど、
ゲームのことをすごく尊重していて
ゲームを盛り上げるのに徹しています。

それが音楽の純度を高めてることに関係していると感じます。

菊田 それはあるかも。

それと創り手となるサウンドクリエイターの
距離感が近い感じがするよね。

僕は、ゲーム音楽を創ったその人が、
ちゃんとそこにいるような感じがするかな。

斉藤 新作のゲームでも音楽を聴いただけで、
サウンドクリエイターさんがどなたか
わかることが多いですよね。

菊田 それがサウンドクリエイターの値打ちだと思う。

さっき言っていたように、
時代のスタイルや流行に流されないで
ゲームのためだけに創ったのがいいのかな。

創り手の心や作品に対しての姿勢が全部表れているから
今、聴いてもいいんだと思います。

斉藤 ただの音楽ではない感じがするんです。

昔は音数も少なかったなかで、
あれだけの表現をされていたっていうのも
サウンドクリエイターさんのスゴさですよね。

今って音がいっぱいあっていいなぁと思います。

いい音源もたくさんあるし、音もたくさん鳴らせますし。

いい音源でアレンジをすると、
いろんなことがごまかせちゃうんですよ(笑)

逆に昔は制限が多かったので厳しかったですね。
でも、制限内で創る面白みがあって、
試されているような感覚でした。

TECHNOuchi 工夫するって大切ですよね。

そうですね。

ファミコンの曲を創っているときは、
3ポート+1ノイズの世界ですから、
効果音で数音取られてしまう場合があります。

だから、効果音が鳴ってしまうタイミングでは、
それでもおかしく聞こえないような
アレンジにしておくんですよね。

菊田 そうそう。

今はカッコイイ音がカンタンに手に入りすぎると思う。

そう思います。

菊田 オーケストラだって、1つ1つの楽器を見ていったら
それだけで成り立たないものだってあるじゃないですか。
それをいかに組み合わせて
キレイにまとめるかという技術の集大成なので、
その工夫が素晴らしいものに繋がっているんだと思う。

TECHNOuchi たまに自分で曲を創っていても、
音色に頼りがちになっててダメだなと気づくことがあります。

そういう時は原点回帰じゃないですけど、
少ない音数でもちゃんと音楽として聞こえるように
音を削って鳴らしてみます。

菊田 昔は映像で描かける部分が薄かったから、
ゲームにおける音楽の説得力っていうのが
大きかったんじゃないのかな。

ゲーム自体が、実際にはない
ファンタジーな世界を描こうとしているので、
作品の雰囲気とか空気を、
音楽が全部背負ってた気がするよね。

TECHNOuchi それはあるかも。

斉藤 僕は、ファミコンからスーファミまでの
音楽が特に好きなんです。

ゲーム音楽として、すごく特性を持っているといいますか。

菊田 ファミコンやスーファミって
いろんなところがすごい舌っ足らずだったよね。

そこで欠落してる情報を
どうやって補っていくかというのを考えて創ったから、
他の音楽の構成とは違うものになった気がするな。

映画とかお芝居は、視覚的情報も多いし、
シナリオも伝わりやすいんです。

だからそれに付ける音楽は、
それに沿ったものになると思います。

TECHNOuchi ハードウェアの進化とともに
ゲームにおける映像は恐ろしくリアルになって来ました。

サウンド面も当然ながらリアルな音を出せる音源となり、
プロデューサーから映画音楽的なものを
求められることが多くなりましたね。

それにもモチロン良さはあるのですが…。

今のゲーム音楽に比べてチープな音のする昔のゲーム音楽が
今のゲーム音楽に負けてるか?
というと、むしろ逆のことの方が多いのは、
ゲームの中における音楽の役割や立場の変化かも知れませんね。

たしかに今と昔ではゲームも、
ゲーム音楽も別世界ですよね。

TECHNOuchi こうやって考えていくと、
ゲーム音楽ってスゴイ特殊ですね。