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ボストンでゲーム音楽を演奏するVideo Game Orchestraとの対談

その8:この見えない“壁”ってなんだろう?

斉藤 先日、光田さんとお会いしたそうですが。

仲間 はい、プロキオン(※12)でお会いしました。
そもそもの出会いは、ボクが「Symphonic Fantasies」を
聴きに行ったのがキッカケです。

ボクは光田さんの曲をよくアレンジするので、
ドイツで挨拶をして、楽譜もお渡ししました。
(※12)有限会社 プロキオン・スタジオ … 光田康典氏が取締役を努める会社。
少数精鋭の“サウンドのプロ集団”として、音楽制作を主な事業としている。

斉藤 すごい、アグレッシヴですね!

仲間 ストリングクインテット(※13)を渡したんですが、
気に入ってもらえました。
(※13)ストリングスクインテット … ここでは、Shotaさんの編曲した、バイオリン1st、2nd、ビオラ、チェロ、クラシックギターの5人編成で演奏した「Radical Dreamers」のことを指している。



斉藤 実際に作曲家の方にお会いしたShotaさんにお伺いしたいのですが、
作曲家の方は、自分の作った曲を編曲されたり
演奏されることについて、前向きに考えていると思いますか。

仲間 すべての人がというわけではありませんが、
それはやっぱり、作曲家にとってはいいことだと思います。

ボクも曲を書きますが、
それを演奏してくれたら嬉しいと思いますし、
ロッカーがコピーをするように、
編曲であろうが、完コピであろうが嬉しいことですよね。

斉藤 なるほど。

仲間 ただ、実際には勤めている会社との兼ね合いもありますので、
おおっぴらには言いづらいところがあると思います。

斉藤 えぇ。
そうだと思います。

仲間 ボクが権利の管理をしている人に言われたのは、
アメリカは書類を書けばOKみたいな
白黒ハッキリしているところがあるけど、
日本では“あうん”の呼吸みたいなところがあって、
“やっちゃダメだけどいいよ”っていうのが
読めないといけないって言われたんです。

確かにそうだなと思って。

斉藤 なるほど。
確かにそういったものは感じますね。

仲間 それでもやっぱりきびしい会社もありますよね。
でも、作曲者も会社も結構寛容だと思います。

例えば、ボクたちがやってることを
止める人がいるとするじゃないですか。
けれど、無断で使用はしていないし、訴えたとしても
ボクらから取れるものってなんにもないんです。

ボクらが何千万、何億とか荒稼ぎしてたら話は別ですけど、
何よりボクらが演奏することで
そのタイトルのプロモーションにもなるわけですから。

音楽的には上手いヘタあるかもしれないですが、
ゲームや音楽が好きな人たちが、
好きなものを発信しているわけですから
それを止めることはないと思うんですよ。

斉藤 そのモヤモヤしている部分をハッキリできたら
もっともっと演奏しやすい環境になっていきますよね。

仲間 ですね。

ゲーム会社にいる人たちも
元々はゲームが好きで作ってるわけですから、
止めてしまったらファンが増えることもないし、
それによってゲーム自体の質が下がることも
わかっているのかもしれません。

とにかく弁護士にお金を払ってまで
止めようとすることはないと思います。
ビジネス的に考えても無駄な労力ですし。

この先、いろいろ制度が作られていくといいですね。

斉藤 それを願っています。