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「植松伸夫の10ショート・ストーリーズ」について

その3:冒険、しようよ!


斉藤 作りたいものを作った
「10ショート・ストーリーズ」とは全く逆ですよね。

植松 そうだねぇ。

普通はCDを出して、制作費が決まっていて、いくら売り上げなきゃいけない。
その目標を達成するにはここを狙わなければいけない、みたいな。

斉藤 そうですね。

植松 もしかしたらこれが化けるかもしれないという
実験的なことは、今はもうしないのかな。

僕が関わった『Fainal Fantasy』なんかはまさにそれだったのね。
当時まったく知られていないタイトルで、
だけどみんな作りたいようにやったという。

若い人が挑戦できない環境っていうのは、つまらないよねぇ。
でも、今の若い人もやってみるといいんですよ。

はなっから大物になろうとして
つまらなくなるなんてことはしなくていいから。

斉藤 考えすぎてしまうと、つまらなくなる場合はありますね。

植松 そうそう。

斉藤 楽団に携わっていると、奏者は部活や市の楽団、
あとは音大などに行っていた人が多いんです。
そこからの延長となると、ピッチや音色などにこだわりすぎて
練習がそれで終わってしまうことがあります。

すべてがそうとは言いませんが、ヘタでも無茶していい気がするんです。

植松 わかる気がするなあ。

アマチュアであったら、余計に無茶してもいいと思うんだよ。
無茶するオーケストラがいないと若い世代に続かなくなるんじゃないかな。

例えばロックバンドやフォークの人たちは
ものすごい上手い人たちがいるけど、
一方で中学校の文化祭レベルの人たちもいる。

でも、いい塩梅のヘタだと、
聴いた人が「俺もできるかも」って思ってもらえるのがいいよねぇ。

オーケストラとかはたいがいの人が上手いから敷居が高いのよ。
だから、ヘタクソなオーケストラがあったら
もっと楽団や奏者は増えて広がっていくと思うね。

斉藤 そうですね。

現在のアマチュア楽団は、演奏の上手い下手はもちろんあるのですが、
各団にハッキリとした特色があるんです。

なので、今ゲーム音楽を演奏したい人は、
少し前に比べて自分のやりたいものを
選択できるようになっていると感じますね。


写真

植松 僕が最初にアマチュア楽団の演奏を見たのは
リトルジャックさんだったんだけど、
ああいう存在が増えてくるといいなあと当時思いました。

ゲーム音楽のオーケストラなんて考えられなかったし、
やっぱり、すぎやまこういちさんの功績も大きいと思います。