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「植松伸夫の10ショート・ストーリーズ」について

Article written by 石橋 加奈子



「コーラ、オレンジジュース、コーヒー、紅茶どれがいいですか?」

これはドッグイヤー・レコーズさんの事務所に入って一番に聞かれたことです。
迷わずにコーラと答える植松伸夫さん。

インタビューでコーラやオレンジジュースが出てきたのは初めてなので、
ビックリしたのを覚えています。


そうそう、事務所を見渡すとドッグイヤー・レコーズのみなさんが
笑顔いっぱいで集合したイラストがあるんです。


写真


お話を伺ってみると、「みんなファミリーな感じなんです」と教えてくれました。
さらに、時には事務所を解放して20人ほどの宴会をするんですって!
その宴会というのがマジシャンを呼んでマジックを披露してもらったり
霊能力者を呼んだりするというから、これまたとっても面白い事務所です。

アットホームで面白いことが大好きな植松さんが制作した初のフルアルバムは、
メロディで綴られたポジティブな10篇の物語。

「植松伸夫の10ショート・ストーリーズ」に込められた“音楽”について
しっかりとお話を伺ってきました。



その1:のんびりゆるゆるな曲作り


斉藤 今日は「植松伸夫の10ショート・ストーリーズ
(以下、10ショート・ストーリーズ)」を
中心にお話を伺っていきたいと思います。

正直かなり緊張していますが・・・(笑)
どうぞよろしくお願いします。

植松 はい、よろしくお願いします。

斉藤 まず「10ショート・ストーリーズ」を作った経緯を聞かせてもらえますか?

植松 やりたいようにやっただけなんですよ。
イメージとしては、お店で売っているんだけど
インディーズレコードのような感じかな。

斉藤 作曲から作詞まで全部ご自身でされていますよね。

ただ、植松さんのお名前から受ける印象と
曲の印象がだいぶ違うので驚きました。
すごいポジティブで明るくて。

植松 よく言われます(笑)

ゲームとなると「○○のテーマ」とか「○○バトル」だとか、
僕のやってきた音楽はシリアスなものが求められてきたんです。

でも、自分の性格ってそんなにシリアスな人間ではなくて
むしろ“面白ければ何でもいいじゃん”という
おちゃらけた部分が基本にあるんですよね。

斉藤 ドッグイヤー・レコーズでの活動を見ていると、
“面白いことをやろう”というのがよく伝わってきます。
イベントにコンサート、CD制作など本当にいろんなことをされていますよね。

植松さんがこういった企画を立てる時は、
作ってみたいというのと聴いて欲しいというのは
どちらの気持ちが大きいのですか?

植松 断然“作ってみたい”ですね。

今回のアルバムも個人的なCDといっていいぐらい、
全部自分でコントロールしました。
制作費もドッグイヤー・レコーズじゃなくて、自分で出しているんですよ(笑)

(一同、びっくり)

斉藤 そうなると、アルバムがどのように制作されたかとっても気になるのですが。

植松 曲というのは2006年頃から期限も目的も決めないで、
ぼんやり時間がある時に書いていったんです。
いつ発売してもいいし、今回この時期になったというのも
10曲ぐらい貯まったから作ろうかなという考えで。


斉藤 すごい、ゆるいですね。

植松 えぇ、そうなんです。

音楽を仕事にしている人たちにとっては大切な意識なんですけど、
商売の音楽には期限や対象がありますよね。

斉藤 はい。

植松 それとは一方に、音楽のよさには“楽しければ何でもいいじゃん”
というのもあるじゃないですか。
そいうのを自分の中でハッキリさせたかったというのもあって、
自由に制作していったの。

斉藤 実際に作ってみていかがでしたか?

植松 諸手をあげて「作ってよかった!」と言える曲は中々ないのですが、
「10ショート・ストーリーズ」の曲たちはそういうものになりました。

いいガス抜きというか、
僕がモノづくりをしていくなかで重要な1枚であることは間違いないです。

斉藤 「10ショート・ストーリーズ」の曲たちはストレートでいい音楽ですよね。
ただ、植松さんのファンは数え切れないほどいるんですけど、
この作品を知っているのは一部ではないでしょうか。

植松 普段の作風とギャップがあるのでとっつきにくいかなとは思っています。

斉藤 恥ずかしながら今回の取材前に初めて聴かせていただいたのですが、
僕もその一人といいますか食わず嫌いをしていました。
ただ、聴いてみるとすごく楽しくてお気に入りのCDになりました。


写真

植松 おっ、嬉しいことを言ってくれるねえ。