その3:USTREAM放送でファンとの距離を縮めたい
斉藤 | ニコニコ生放送の『おとや』、USTREAMの『ノイズなやつら。』といった インターネットを活用した生放送も積極的に行われていますね。 |
坂本 | はい。 僕は子供の頃からゲーム音楽作曲家になりたいと思っていたのですが、 当時はインターネットもなく、 ゲーム雑誌にもあまり作曲家の情報が載っていなかったんです。 こんなにたくさんゲームが出ているのに、 誰が音楽を作っているのか分からない。 どうやって作っているのかもわからない。 ゲーム音楽作曲家になりたいけれど、 どうやってなればいいかわからない、 という状況があったんです。 なので僕は、ゲーム音楽の作曲家をもっと身近にしたいという思いがありました。 音楽を作れるからと言っても、特別なわけではなく、 普通の人達が集まって楽しく作っているんですよ、というのを ファンの方たちに知ってほしかったんですね。 なので、『おとや』は基本的に、お酒を乾杯するところから始まります。 下村さんや光田さんといった出演者のみなさんは有名な方ばかりなので、 今までたくさんインタビューを受けてこられていて、 真面目な話は言い尽くされています。 なので、飲んで乱れたら一体どうなるのか?というのを見せたかったんです(笑) そして、絶対インタビュアーが聞けないようなことを どんどん聞いてみたかったんですね。 ちなみに、『おとや』の元になった企画が コンポーザー座談会(※)というものだったんですが、 そこでは、1000万円あったら何に使うとか、 女性に対して最初に目がいく所はどこか、 などをお酒を飲みながら語り合う、というものでした。 どうでもいいことかもしれないけれど、 ちょっと近づくじゃないですか、距離が(笑) |
斉藤 | そうですね(笑) |
(※) 「第1回ゲームミュージックコンポーザー座談会」 株式会社ノイジークロークにて行われたゲーム音楽コンポーザーによる座談会。 公式サイトにてその模様がご覧いただけます。 | |
坂本 | そういうことをやりたかったんです。 これから業界を目指す人たちに対して、 どういう人たちが音楽を作っているのかというのが分かるものを。 |
斉藤 | 『おとや』のメインメンバーはなぜあの6人なんですか? (坂本英城氏・光吉猛修氏・佐野電磁氏・ 光田康典氏・下村陽子氏・なるけみちこ氏) |
坂本 | ちゃんと考えがありまして。 まず、全員出身の会社が違います。作る音楽のジャンルも違います。 デジタル系から歌ものからオーケストラから、全部揃っています。 なので、どんな質問に対しても答えられる準備があるんですね。 意外と真面目に人選は考えています。 あとは男女のバランスもいいですし。 |
永芳 | 以前下村さんは、くまのぬいぐるみという設定での出演でしたね。 あれはどういった経緯だったんですか? |
坂本 | 最初下村さんは、(下村さんの真似をしつつ) 「ええー、わたしはいいわよー、顔とか出さなくてー」と言っていたんです。 「でも、みんな顔を出すんですよ」と僕が言うと、 (また下村さんの真似をしつつ) 「だって今まで顔を出したくないからって断ってる取材たくさんあるんだもん。 その人たちになんて言えばいいのー?」って言って。 |
川越 | ・・・・似てますね(笑) |
坂本 | ということで、第1回は天の声として、第2回はくまを用意しての声の出演でした。 ・・・でも、だんだん下村さんが、 番組を見ていて「出たい」という気持ちになってきたみたいで。 「次からは顔出してもいいかな」と言い出したんです。 じゃあぜひ、ということで、 その次の『おとや(貧)』から初めて顔出しで出演されましたね。 |
斉藤 | あのくまは下村さんが購入されたのですか? |
坂本 | あれはなるけさんが買ってきたんです。でかすぎですよね(笑) (川越さんに向かって)あれは今どこにあるんだっけ。 |
川越 | 作業場のクローゼットに入ってます。頭が下になって(笑) たまにちゃんと日干ししてますよ(笑) |
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坂本 | 『おとや』のTシャツをくまちゃんに着せたときが ちょっとかわいそうでしたね。ムリヤリ袖を通してましたから。 |
川越 | あれ、脱がせられないんですよね。どうしましょうか・・・ |
坂本 | くまは下村さんが引き取りたいって言ってたよ。 |
川越 | そうなんですか!それはぜひ。 というか、しもくまさんがいるのでクローゼットが狭くて狭くてしょうがないんです。 ほんとはクローゼットに入れたい機材を外に置いているという よくわからない状況で(笑) |
坂本 | なんだか最近、下村さんはしもくまさんって呼ばれているみたいですね。 |
永芳 | ファンの間では定着してきているみたいですね(笑) |
坂本 | あとは『ノイズなやつら。』という番組ですが、 これは『おとや』とは切り口がちがいます。 『おとや』は例えて言うと、民放バラエティ番組のような位置づけですが、 『ノイズなやつら。』はNHKスペシャル的な位置づけですね(笑) まったくコンセプトが違うんです。 『おとや』はたくさんの方々に見てもらうことに意味があります。 たくさん見てもらうことに意味があります。 『ノイズなやつら。』は、半ば趣味でやっているので、 見たい人だけ見てくださればOKというスタンスです。 なので、5時間ほど延々将棋をやったりと、とんでもない回があったりしますね。 『おとや』は30,000人以上の方が見にきてくださったのですが、 『ノイズなやつら。』の将棋の回の視聴者は30人ほどでしたね。 |
川越 | 画面上に「視聴者:8」って見えてるときもありましたからね(笑) 8人の方に見てもらえる、というのも大変ありがたいですけれど。 |
坂本 | ちなみに将棋の回の視聴者のひとりが菊田裕樹さんだったんですよね。 お会いした時に、「よかったよー坂本さん!将棋の回!」って言ってもらえて(笑) これも褒めてくれたのは菊田さんだけでしたよ。 ああいったソーシャルメディアは今後も活用していきたいです。 |
斉藤 | やはり、ファンに自分たちのことを伝えたいという面では とても合うメディアですよね。 |
坂本 | そうですね。 あと、大きな会社はこういったことはなかなかできないですから。 「それでどれだけ採算が取れるの?」という話になってしまいますからね。 そういうところとは全然別で、ファンの方との距離を より縮めていきたいと思っています。 |
永芳 | ファンとしてはうれしいですね。 菊田裕樹さんが開催している 『菊田裕樹のゲームミュージックファクトリー』のような、 ファンとの交流イベントは考えられていますか? |
坂本 | 是非やりたいですね。まだ具体化はしていないですが。 ただもう、他の方がすでにやってらっしゃるので、 何か違う方向性でやったほうがいいかなという気はしていますね。 何が一番うれしいでしょうね、ゲーム音楽が好きな人にとっては・・・? やはり、作曲家と直接会ったりできるのがうれしいのでしょうか。 |
斉藤 | 一概には言えないですが、たいていの人は作曲家の方を実際に見たり、 お話できたりというのはやはりうれしいですよね。 ただ、日本のファンはけっこうシャイな方も多いので、逆に近すぎると・・・ |
永芳 | そうですね。いざ作曲家本人を目の前にすると、 何をしゃべっていいのかわからない、という人も多そうですよね。 |
斉藤 | 僕個人はコンサートくらいの距離がいいのかなと思いますね。 舞台と観客で、同じ空間にいるけれども距離がしっかりある、というような。 |
坂本 | でも、それって完全に受け身じゃないですか。 自分から何かを聞きたいという時にはやっぱりUSTREAMになるんでしょうか。 たとえばコンサート会場での挙手での質疑応答とかだとやりづらそうですし。 |
斉藤 | それだとしづらいですよね。 質疑応答などは、USTREAM等のほうが聞きやすいと思います。 とくに少ない人数が見ているときのUSTREAMは すごくコミュニケーションがとりやすいですよね。 あと、たとえばロシアコンサートのUSTREAMの場合ですと、 録画再生なので、同じ映像を見ながら 坂本さん、いとう(※)さんとファンの皆さんが ツイッターなどでコミュニケーションを取れますよね。 坂本さんの指揮の映像を一緒に見ながら、指揮をしていたときは こういうことを思ってた、などの話を聞けたりだとか。 |
(※) いとうけいすけ氏 ノイジークローク所属の作曲家。コンサートのUSTREAM放送に出演。 | |
永芳 | 裏話を聞けたり。 |
坂本 | あー。副音声みたいなものですね。 |
川越 | ロシアコンサートの放送では、坂本さんと私で コンサートについてのコメントをツイッターに書いていこうかと 開始直前まで話していたんですよね。 でも、コンサートを聴いていただくことに集中してもらったほうが いいのではないかということになり、コメントするのはやめました。 |
坂本 | そうですね。 あれはその場でコンサートを見ている感覚にしたかったというのがありました。 間には広告も入らないようにしましたね。 あのコンサート映像は、もう一度流したいとは思っているので、 もし今度できるなら、ファンの方と一緒に放送を見ながら 皆でコメントしあうようなことをやれたらいいなと思いますね。 指揮台に立った人間だけが知り得ることもありますから。 |
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