その3:「なんでも、100だ。」
斉藤 | 次は、『ワイルドアームズ セカンドイグニッション』 (以下、『WA2』)の制作に入るわけですね。 |
なるけ | そうですね。『WA2』を作ってる最中に、 「ちゃんとやらなきゃ!」って自覚が出てきました。 気がまえをして臨んだ感じで。 |
永芳 | 『WA2』からは、主題歌に麻生かほ里さんが起用されますが、 麻生さんとのおつきあいは何がきっかけだったんですか? |
なるけ | 『ワイルドアームズ』(以下、『WA1』)のエンディングで 渡辺真知子さんに歌っていただいたのは、 もともと歌ではなかった曲を歌にしたものだったんですが、 『WA2』は初めから、歌を作ろう!となったんですね。 では、歌い手さんをどうしようかとなった時に、 私はこの人がいいなと思った歌い手さんは、 麻生さんではない他の方だったんですよ。 |
永芳 | そうだったんですか。 |
なるけ | はい。で、その方のCDを、金子くんのところに持っていったんです。 でも金子くんは、「いや、もう僕は心に決めた人がいる!」と言って……。 それが、麻生さんだったんですよ。 なぜ麻生さんかというと、彼は『ナースエンジェルりりかSOS』というアニメをよく見ていて、その主人公のりりかちゃんの声を担当されていたのが麻生さんだったんですよ。 |
永芳 | なんと(笑)。そうとうハマられていたんですね、金子さん…! |
なるけ | 「麻生さん一択でお願いします!!」と言われましたから(笑)。 はい、分かりました、となって。 私が麻生さんと初めてお会いした時には、 7〜8曲くらいデモ曲を持ってきてくれたんですよ。 すごく情感のある歌い方をされて、しかもいろんな歌い方ができる人だなと思って。 「麻生さんとなら、いろんなことをやれるかもしれない」と思ったのをよく覚えています。 |
斉藤 | なるけさんは作詞もされますが、 歌詞を書くようになったきっかけはどんなところからなのですか? |
なるけ | 私は自分で歌いながら歌を作るんですけど、 そのためには、やっぱり歌詞がないとなと思って。 「ラララ…」で歌ってもどうなんだろう、と。 なので、それっぽい歌詞をあてて歌を作ってみたんです。 デモテープも、自分で歌ったものを録音して。 ……金子くんにそれを聴いてもらう時は、 「聴くのは1回だけね!イヤホンして!イヤホン!」って言って聴かせてました。 恥ずかしいから(笑)。 |
斉藤 | (笑)。 |
なるけ | 「これ、歌詞はなるけさんが書いたの?」と聞かれて。 「どうやって作っていいか分からないから、 前後の脈絡は合ってないかもしれないけど、言葉を入れてみた」と答えて。 「なるほど。この歌詞、いいかもしれないね。もう1回聴いていい?」「ダメ!」って(笑)。 そんなやりとりをしてました。 でも結局、その時に書いた歌詞が、そのまま採用されたんですよね。 『WA2』のオープニング曲なんですけど。 作詞をするようになったのは、そういういきがかり上なんです。 もう、転職するためにフロムエーを買ったのと同じですよね。 本当に、なりゆきで。やってみたら出来た!っていう。 以前から詞を作っていたとか、そんなことは全然ないんですけどね。 |
斉藤 | それからは、詞を書ける人、 みたいになっていったんですか。 |
なるけ | はい。金子くんに「次もよろしく〜」って言われて、 (得意げに)「ああ、そう?」って(笑)。 とんだなりゆきの成り上がりですね。 このあとだいぶくじけるんですが。 |
斉藤 | 作詞をされる時のこだわりはありますか? |
なるけ | 「歌詞カードを見ないでも、歌を聴けば何を言っているのかわかるように」 というのは気をつけてます。 あとは、前後の脈絡があるお話になっていることですね。 言っていることが当て字になっている、というものはやりたくないんです。 そこはこだわっているところですね。 ……これは、私がアニメ好きだった影響が大きいです。 とにかく分かりやすいものを、っていう。 |
永芳 | 一度聴けば忘れない感じですね。 |
なるけ | ですね、子どもが歌いながら戦えるようなね! 「マジンガーZ」とか「くろがねの城」とか(笑)。 子どもが聴いてもかっこいいと思いますよ。 メロディはもちろんですけど、言葉の響きも大事にしています。 |
永芳 | しかし改めて『WA2』のサントラを見ますと、曲数がとても多いですよね。 100曲を超えていて。 |
なるけ | 実際200曲くらい書いているんです。 ボツになった曲もいろいろあって……そこから残った曲なんですよ。 やっぱり、『WA1』や『WA2』のお仕事をやって思いましたけど、 曲数を書くと、それなりに慣れるんです。 これはギタリストの窪田晴男さんがおっしゃっていたことなんですけど、 「なんでも100だ」と。 |
永芳 | 100、ですか。 |
なるけ | はい。作曲するのでも、レコーディングするのでも、100。 レコードコピーも100。 100の単位で物事をやっていけば、それなりに慣れて、 自分の中にもひとつの型がちゃんと残るんです。 ひとつの目安として、何かをやり遂げるには、100なんですよ。 それは私にも当てはまっていると思います、今までにやってきたことを思うと。 これからも、それを意識してやっていきたいですね。 |
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