その4:自分らしく、耳に残る曲作りを。
斉藤 | 普段活動している中で、 ほかのゲーム音楽作曲家の曲が気になったりすることはありますか? |
植松 | 最近はそんなにガッツリゲームをやる時間は取れないんですけど、 話題になってるサントラやゲーム音楽があったら耳にするようにしてますね。 でも近頃、そのへんのハリウッド映画で流れているような音楽がけっこう多くて。 それってたぶん、ディレクターやプロデューサーが そういったものを求めてるんですよね。 ガッツリその人がやってる意味というか、作家性を感じられるものって 意外と少ないかもしれないです。 |
斉藤 | 作家性、ですか。 |
植松 | ええ。本当はもっと、ゲーム文化というものを考えたら、 また、ゲーム独自の発展性を意識しているのであれば、 ゲーム音楽作曲家の作家性をもっと重んじるべきだと思いますね。 今はあまり冒険ができないというか、作家性を前に打ち出したような 冒険作を出す余裕があまり無いのかもしれないですけどね。 |
坂本 | ですね・・・。 僕は、こういう植松さんのお考えを、正当継承しているつもりです。 耳に残らない音楽というのは、植松さんのおっしゃる通り ゲームでやる意味もあんまりないと思いますし。 僕は、耳にちゃんと残って口ずさめて、というのを意識して作っているんですが、 それは植松さんの影響が大きいですね。 実際、PRESS STARTで取り上げられる曲や、 ユーザーのみなさんから愛される曲は、 ハリウッド系の音楽ではないじゃないですか。 やっぱり、ちゃんとメロディがあって。 |
斉藤 | そうですね。 |
坂本 | 言葉は悪いですけど、最近のゲーム音楽は 消費財のようなものが多い気がしていますね。 作っては捨て、作っては捨て、みたいな・・・ たしかに雰囲気は盛り上げているけど、全然後に残っていかなくて。 ゲームやゲーム音楽の文化を考えると、 なんだか違う方向に行っているような違和感があります。 僕も、ディレクターの方からそういったハリウッド的な曲を作ってくれと 言われることもありますが、作りながらも無理やり自分らしさを 入れていくようなことをして、なんとか食らいついてます。 |
植松 | 「これはスターウォーズみたいな感じで」とか・・・ じゃあジョン・ウィリアムズに頼めよ!って言いたくなりますね。 一番あなたの欲しいものはそこにありますから、って。 |
坂本 | そうなんですよね。 |
斉藤 | 最近、ゲーム音楽はアマチュアでも演奏される機会が増えてきていますが、 そういったところで演奏されるのは、やっぱり奏者がいいと思う曲や、 好きな曲が演奏されることが多くて。 そういう意味で、演奏される曲というのは、本当に面白い曲なんですよね。 ちゃんと聴かれているというか、選ばれている、と。 やっぱり、演奏すること自体すごく大変なことじゃないですか。 そこまでしてやりたいと思うのは、いい曲のことが多いんですよ。 |
坂本 | 最近僕は、曲を作る時に、 「演奏して楽しいものにしよう」と思うようになったんですよ。 そうしておくと、曲がどんどんひとり歩きして広まっていくでしょ。 そういうことを、作家のほうでも考えなきゃいけないんです。 ゲーム音楽という文化を残すためには。 |
植松 | でも昔は、作ったゲーム音楽を自分らが演奏するって前提がなかったので、 どうしても無茶なことやらせてますよね、コンピュータたちに。 で、それをいざ自分らが弾くとなった時には 「うわっ、やんなきゃよかった」ってなっちゃって。 |
坂本 | 『ファイナルファンタジーV 』の「ビッグブリッヂの死闘」とか、 絶対演奏のこと考えてないですもんね(笑)。 |
植松 | うん、全然考えてなかったですよ。 自分では弾けないものだから、その代わりコンピュータに全部やらせちゃった。 その報いが今、来てるんでしょうかね(笑)。 |
坂本 | まさか演奏することになるとは、と・・・ そういえば最近は、エレクトーンで ゲーム音楽を弾いて動画を上げている人もいますよね。 すっっごく上手いんですよ! |
永芳 | 上手い人いらっしゃいますよね。 演奏ではないですが、植松さんの音楽を 全部自分の声だけで作った動画を上げている人もいましたね。 植松さんも、ツイッターで「これはすごい」と言っていて。 |
植松 | 言ってた、言ってた。 |
永芳 | あれも、よくやるなあと思いましたね。 |
植松 | ねえ、よくやるよね。熱意がすごいですよね。 僕らは知らず知らずのうちにあの熱意がなくなってるんですかね。だんだん。 10代とか20代の時って、 後先考えずにひとつのことにガーッといけるじゃないですか。 でもだんだん歳をとってくると、 あのがむしゃらにひとつのことに突き進むってのが薄れるんですよね。 だから、そういう動画を見ると本当にうらやましいです。 こういったことに、たくさんの時間を費やして、おもしろいことをできる人は、 僕は普通の人生では終わらないと思いますよ。 |
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