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変わらないZUNTATAの魅力

その3:積極的な展開 -USTREAM放送、CD、iTunes配信-


斉藤 話は変わりまして、ちょっと答えづらい内容かもしれませんが、
2005年よりタイトーがスクウェア・エニックス・グループの一員になったことで、
何か変わったことはありましたか?

石川 びっくりするくらい何も変わっていないですね(笑)

小塩 スクウェア・エニックスのサウンドの方々と近くなったということはメリットですね。
色んなことを相談できますし、
アーケードの音シュー「ミュージックガンガン!2」では作曲をお願いしたし、
「ダライアスバースト リミックス ワンダーワールド」
(後述)ではアレンジをお願いしたし。

内田 スクウェア・エニックスの前は、京セラグループだったからね。
さすがにそういう繋がりはなかった(笑)

土屋 僕はスクウェア・エニックスと一緒になってから入社しました。
特に職場が新宿に移ってきて、スクウェア・エニックスとより近くなって、
スクウェア・エニックスのサウンドのみんなと
沢山遊べるようになって嬉しいですね(笑)

内田 良くなったことはあっても悪くなったことはないですね。
今の職場は新宿なので、耳に入る情報が凄く多い。

小塩 以前の海老名だと、収録でも移動のせいで1日つぶれちゃいましたしね。

斉藤 良くなったことばかりですね。
あと、先ほど(その2)伺ったこととも重なりますが、
ZUNTATAの活動は、社内でどのように見られているのでしょうか?

石川 サウンドには昔から独立愚連隊みたいなノリがあるので、
僕らが何かをやると、
「サウンドが面白いことやってるね」
みたいなふうにはなりますね。


写真


内田 「またサウンドがわがまま言って」
みたいに囁かれた時代もありましたね(笑)
でも、そのわがままが悪い結果を残したことも特にないので、
「聞いてやるか」みたいな雰囲気も社内にはありますね。

石川 また最近では、ZUNTATAブランドを
ゲームのウリとして利用しようという動きがあります。

「ミュージックガンガン!」にZUNTATAの曲をいっぱい入れようとか、
ゲームのシグネチャやスタッフロールに
ZUNTATAのロゴを入れてくれるケースがすごく多いんですよ。
今の社内的状況は、昔以上にいいのかも知れません。

内田 タイトーから出るゲームはたいがいZUNTATAがやってるわけだから、
わざわざ「ZUNTATAがサウンドを担当!」と煽りを入れるのは
不思議と言えば不思議です。
でも入れることによるブランド力のイメージ付けというのが期待される時には、
入れてもらっていますね。



斉藤 次に、「ダライアスバースト」のアルバムについておうかがいします。
2083WEBの「2010年ゲーム音楽レビュー」という投票企画で、
オリジナルサントラが2位、
アレンジアルバム「ワンダーワールド」が3位と高く評価されました。
やはり反響は大きいですか?

土屋 反響は沢山の方々からいただいています。
有り難いですね。何でかはわからないですが(笑)
色んな方に聴いていただいて、
良かったと言っていただけるのは本当に光栄ですね。

石川 ここ数年のZUNTATAのアルバムの中では一番売れてますね。
サントラもワンダーワールドも発売から約1年ですが、
どちらも定期的に追加発注が来ています。
自分たちで作って売ってるので、追加注文が来るとよけいに嬉しいですよ。

内田 サウンドの部屋で「300枚追加あったぞ!わーい!」みたいなね。


(一同笑)


石川 だから現場は全員、何枚くらい出てるか知ってますね。

土屋 ゲーム音楽のサントラに手を伸ばしていただけるというのは
相当難しいことだと思っているので、
色んな方に聴いてもらえて良かったと思いますね。

石川 「ダライアスバーストでZUNTATAを知りました」とか
「初めて買いました」というのが特に嬉しいですね。

内田 普通、サントラCDのジャケットって、
ゲーム画面がドーンと入ると思うんです。
でも、うちがサントラCDを作る時って、
大概ゲーム画面って入れないんですよ。

それは作曲者本人が思い描いたイメージを
具現化してデザインを作り出しているからなんです。
「ダライアスバースト」の時もそうしています。
不思議なジャケットになっていると思います。


ダライアスバースト オリジナルサウンドトラック
(Amazonリンク)
ダライアスバースト オリジナルサウンドトラック


多分お店にあってもゲーム音楽のCDって分かりにくいと思うんです。

でも、このデザインがユーザーさんに抵抗なく受け入れて貰えている様なので、
この考えは正しかったのかなと。

石川 オリジナルサントラも「ワンダーワールド」も、
土屋にコンセプトデザインというかビジュアルイメージがあって、
それをデザイナーさんに伝えた。
コンポーザー本人のイメージが形になっているアルバムですね。

土屋 ええ、僕が思い描いている音の世界をそのままそこに、という感じですね。




斉藤 最近、USTREAMで積極的に放送をされています。
放送を始めた経緯や目的、反響などについてはいかがですか?

内田 USTREAMを率先してやっているのは僕です。
タイトーのオフィシャル放送「TAITO LIVE!」を十数回か行い、
最近では「ZUNTATA NIGHT」を1、2とやりました。

特に「ZUNTATA NIGHT」に関してコメントすると、
僕らが作り続けてきた音楽を評価していただくには、
まずは聴いてもらわないといけない。

でも、実際にプレーしたことのないゲームの音楽は知る機会がないですよね。
そこで最近は、広く知らせようというご好意だとは思いますが、
YouTubeやニコニコ動画などで勝手に曲をアップロードされる方がいる。
厳しい言い方をすると、それは当然NO GOODなんですよね。
見つけたら削除してもらっています。

ですが今、ユーザーさんがゲームやゲーム音楽の情報を収集するには、
ネットの動画は実際に有効な手段になっていると思います。
ですから、それを取り締まるだけではなくて、
オフィシャルとして積極的に利用していったらどうかと考えました。

そうは言っても、無料で音楽を流すということは、
「ここで聴けるならいいや」と満足する方も
いらっしゃるかもしれない、という危惧はあったんですね。

で、試しに「ZUNTATA NIGHT 1」をやってみたんです。
結果から言えば、すごく良かったんですよ。
僕らが危惧していたようなネガティブな側面はほとんどなくて、
むしろCDの売上やiTunesのダウンロード数は伸びました。
視聴者数が増えればイベントなどの告知効果も高まりますし、
CDのセールスにも良い形で影響していきます。

また、ビジネスはビジネスとしてありますが、
何より、インタラクティブに放送することによる
ユーザーさんとの一体感がプライスレスです。
ライブ会場での一体感に近いものが
USTREAMで気軽にできるようになったというのは
すごく嬉しいことだと思いますね。

ライブをやるとかサントラを出すとか
何かタイトルを出す時のタイミングを見計らって
今後もやっていこうと思います。
何せZUNTATAは24年くらいサウンドを作り続けているので、
選曲数には事欠かない(笑)

あと、「タイトーライブ」は基本的に社内の部屋を使ってやっていますが、
「ZUNTATA NIGHT」はあえて社外でやっています。
社外でやることによる特別感、お祭り感みたいな意識が、
やってる側、見てる側、両方に高まるかなと思って。

社内の会議室でやると、やってる側もあまりはっちゃけられない。


USTREAMの今後の目標地点としては、
例えば視聴者数が1万人になれば終着地点とかではなくて、
「続けること」が目標かなと思っています。

最近ではAmazonのリンクを表示できるようになるなど、
放送の機能面が進歩している。
時代の変化に対応して続けることが目標ですね。

僕らがそういうことをやることによって、
「かつてこういう表現があったよね」
という何らかの存在になればいいかなと思ってやっています。

・・・以上がレジュメです。


(一同笑)


小塩 インタビュー用にレジュメを用意してきたんですね(笑)

高部 CD化やiTunes配信をされていない曲も放送されていて、
僕自身も聴いていて嬉しいんですが、
そこで反響があったらiTunes配信するという可能性もあるのでしょうか?

内田 あると思います。
iTunes配信は現場の判断で割と自由にできるようになりました。
CDを出すというと重い話になりがちですが、
需要があることが分かれば、
現在70アルバム以上ありますが、
今後さらに積極的に配信していきたいと思っています。

石川 CDで出して欲しいという声はすごく多いのですが、
採算の面でどうしても難しい時があります。

ゲーム音楽の市場的には小さくなっていて、
今から10年前や20年前なら、
大抵どんなゲームでも出せば採算ラインに乗ったんですよ。
しかし、今は採算割れするタイトルが少なくありません。

ただ、それで埋もれさせるには惜しいタイトルが山ほどある。
そういうのをiTunesで配信しています。

iTunes配信は基本的に私が配信計画を立ててやっているので、
現場の判断でサントラが出せてしまう。値段も決められる。
そういう意味ではクリエーターとリスナーがCD以上に近いメディアですね。

CDで出してもらいたいという気持ちは分かりますが、
配信であれば、よりマイナーなタイトルも出せるという利点もあるので、
ご理解いただければと思います。
今後iTunes以外のメディアでも配信をやっていければと思っています。

高部 配信タイトルが増えると、ファンとしては嬉しいですね。

石川 新作ゲームなら音源をすぐにコンポーザーから集められるので、
配信しやすいです。
昔のものは、マスターテープが残っていない場合もあり、
基板から新録となると結構大変ですね。
僕の本業が忙しいと、
なかなかiTunesの新作が出ないということになります(笑)

配信ではCDよりも大分コストを抑えてリリース出来ますので、
タイトルは増やしていきたいですね。

内田 配信で盛り上がればCD化の可能性も出てきますね。

石川 3月30日に出る「スペースインベーダー インフィニティジーン」の
サントラはまさにその形です。
僕らがiTunes配信を始めたのが2006年ですが、
その頃は「ダライアス」、「レイ」シリーズ、「電車でGO!」などの楽曲が
ダウンロード数のトップだったんです。
でも、ここ最近はずっと「スペースインベーダー エクストリーム」か
「スペースインベーダー インフィニティジーン」が
ダウンロード数のトップなんですよ。
そういう結果を見てCDにしようということになりました。


スペースインベーダー インフィニティジーン
エヴォリューショナルセオリー
 (Amazonリンク)
スペースインベーダー インフィニティジーン エヴォリューショナルセオリー

公式サイト:スペースインベーダー インフィニティジーン エヴォリューショナルセオリー


小塩 iTunesで出してるけどCDで出さないんですか?
というリクエストは多かったですね。
iTunesは手軽に曲を入手できる反面、
再生されるPCやポータブル再生機が制限される。

その中でもこれだけダウンロードされてるということは
CDにしてもっとたくさんの方に聴いていただきたい、
ということで出すことになりました。


写真


石川 配信からCDという流れもあるので、
ファンの方には配信にも注目していただければと思いますね。

小塩 「スペースインベーダー インフィニティジーン」自体がそういう運命なのかな。
最初は携帯のゲームでしたからね。
携帯からiPhoneになって、Xbox 360やPS3でもリリースされています。
音楽もiTunes配信からCDになりました。

高部 「進化」というゲーム自体のコンセプト通りですね。

石川 そうですね。うまいこと言いますね。


(一同笑)


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