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変わらないZUNTATAの魅力

Article written by 高部 大幹




その1:20年以上の歴史で何を引き継ぎ、何が変わったのか


斉藤 ライブの準備もお忙しい中、本日は有難うございます。
早速ですが、まず長年の活動についてお伺いしたいと思います。

ZUNTATAを名乗ってから20年以上経ちますが、
何を引き継ぎ、何が変わったのでしょうか?

石川 基本的に、昔も今も仕事の内容は変わっていません。
制作するゲームの本数がかつてより少なくなったこともあり、
チームの規模は小さくなりましたが。
しかし、ゲームに合ったいい音を
プレーヤーに届けるこだわりは、昔から変わっていません。

今は機材も発達して、誰でも手軽に音楽を作れます。
でも僕らは長年、ゲームの音を作り続けてきて、
先輩から受け継がれた部分がある。
ゲームの中で最も効果的にサウンドを鳴らす方法や、
アーケードの筐体から一番効果的に音を響かせる方法などを、
僕らは受け継いできています。

そのようにして「いい音を鳴らすこと」をこだわり続けるということは、
フリーでないゲームメーカー所属のサウンドチームとして、
ずっとこだわっていくところだし、重要な使命だと思っていますね。

外部のサウンドスタッフと違い、
僕らは筐体を作るところから絡んでいける。
そこで「音を作る」だけではなく、
「音を鳴らす」ところからこだわるのが
受け継がれてるスタンスですね。

斉藤 なるほど。

現在のコンポーザーさんである小塩さんと土屋さんは、
以前のZUNTATAのサウンドを意識されて入社されたのですか?

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小塩 私の場合はZUNTATAらしさというより、
タイトーがアーケードのメーカーということで、
単に音作りをするだけではなく、スピーカーまで含めた
トータルなサウンドデザインが出来るという点に
魅力を感じてタイトーを受けました。

土屋 意識をしたということは全くないですね。
すごく有名なサウンドチームだとは思っていますが、
だから何かということはないです。

ただそのプレッシャーというのはいい方向に働いていると思っています。
ゲームではどんなにいい音を作っても注目されるのが難しい部分もある。
その中で、先輩方が作り上げてきた名前が
いい意味でプレッシャーになっているので、なかなか面白いですね。

斉藤 ファンからは、新旧の違いについて言われる部分もあるとは思いますが、
作っている側としては左右されないでやってるということですね。

石川 結局気にしたってしょうがないですからね(笑)
小倉久佳さんたち昔のメンバーには、それぞれいい個性があった。
でも、僕らは彼らではないので、同じものをは作れない。
そこは意識してもしょうがないんです。

また、ゲームも時代によって変わっています。
昔のゲームで良かった音を今のゲームにつけたら良いとも限らない。

ただ、注目されるということはプレッシャーにもなりますが、
良いことでもありますよね。

例えば「携帯電話アプリの音をZUNTATAがやりました」というと
「では、聴いてみようか」という方がたまにいらっしゃる。
仮に僕らが何のブランド名もないフリーの音屋だとして、
クレーンゲームや携帯アプリのサウンドをやったと言ったところで、
「では、聴いてみようか」という人はあまりいないと思うんですよね。

そういう意味で、「とりあえず1回聴いてみよう」と
思ってくれるだけでも凄く有り難いですよね。
そこは受け継いできた名前に感謝するところです。
プレッシャーというより、うまいこと背中を押してくれているような感じです。

土屋 僕は昔のコンポーザーさんとは在籍がかぶっていないんですよ。
先輩方の曲はすごく面白くて勉強になります。
でも先輩方の曲を聴いて思ったのが、
「ZUNTATA」って名前で一括りにするのには
随分バリエーション豊かだなっていう。


(一同笑)


これをひとつZUNTATAって呼んでたんだ!って
僕はむしろビックリしましたね。
ZUNTATAって一括りにできるような人は、
一人もいなかったと思います。
よくあんなすごいメンバー集まったなと(笑)

ただ、ファンの方々からすると、
そのバリエーション豊かなのが良かったのか、
それを一括りにしたZUNTATAという中から
色んなものが生まれてきたから面白かったのか。
そういう意味では、我々がやっていることもある種「ZUNTATA」なのかなと。

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石川 昔から「ZUNTATAらしくしよう」とは
誰も思っていなかったんじゃないでしょうか。
自分の作風で、そのゲームの一番いい音にしようと
各自で思っていただけで。

土屋 でも、他よりも尖っているかも。

石川 それはあるかも知れない(笑)

土屋 ZUNTATAカラーというよりも、
各コンポーザーのカラーを前面に出しますよね。

石川 逆にそういうバラバラな個性を
一括りで「ZUNTATAだ」って言い放っているってことが・・・

土屋 かっこいいですよね(笑)

石川 それがZUNTATAっていう存在の面白さじゃないかな。
ZUNTATAらしいサウンドって、
ファンによって一人ひとり絶対違うと思うんですよ。
送り手にも受け手にもそれぞれ別の「ZUNTATAらしさ」があって、
それはそれでいいんじゃないでしょうか。

それぞれ個性を重視した音作りは受け継いでいる。
そういう意味では僕らはZUNTATAなんじゃないかなと思うんですよね。

土屋 僕はタイトーに来て、音作りに関しては、
ある種解放された感はありますね。

何かを押し付けられた音作りをするというより、
「どんどん出してこい」という感じの作り方ですね。
タイトーならではのやり方だと思います。

小塩 私は新卒で入ったのでタイトーしか知らないのですが、
例えば小倉さんにみっちり作曲を教えてもらったことはなかったですね。
「今度お前これ担当することになったから」と言われて、
「えっ?じゃあ何とか頑張るか」という感じで。。

ZUNTATAらしいという枠は無い代わりに、
自分自身でそれを作っていかないといけないので、
最初の頃はプレッシャーを感じましたね。

石川 別の意味のプレッシャーは、ありますね。
僕は効果音やディレクションを専門として21年在籍していて、
今でこそ組織のまとめ役になっていますが、
「作曲できない人間がサウンドの頭でいいのかなぁ」という、
そういう意味でのプレッシャーはありますね。
やっぱり作曲できる人はかっこいいじゃないですか。


(一同笑)


あと、最近は「ダライアスバースト(※)」
「スペースインベーダー エクストリーム(※)」、
「スペースインベーダー インフィニティジーン」などがあるから、
「ZUNTATAってまだいたんだ、頑張ってるんだ」と言われるんですが、
「僕らずっとやってるし!」みたいな。


(一同笑)


メダルやクレーンや携帯アプリなどのサウンドもたくさん作っているんですよ。
ゲーム音楽ファンが好むようなジャンルのゲームを作っていないと
何もやってなさそうに思われて、ちょっと哀しいですね(笑)

(※) ダライアスバースト ・・・ タイトーの人気横スクロールシューティングゲーム「ダライアス」シリーズの後継製品。2009年にPSPにて発売。2010年には「ダライアスバースト アナザークロニクル」がアーケードゲームとして稼動。
(※) スペースインベーダーシリーズ ・・・ 1978年にリリースされ、大きな話題を呼んだスペースインベーダーの後継製品。「スペースインベーダー エクストリーム」は、DS・PSP・Xbox 360、「スペースインベーダー インフィニティジーン」は、携帯電話ゲーム・iPod touch・iPhone・PS3(PSN)・XBLAにてそれぞれ発売。

土屋 個人的にもそう思いますね。
僕は最近入ったんですが、
入ってから何かと言うと「復活」とか「12年ぶり」とか。
あ、12年ぶりのZUNTATA単独ライブは本当のことか(笑)

でも、復活というのはちょっと・・・
潰れていたわけではないですから。
ただ作る人間が変わったという意味で「新生」ではあると思います。

小塩 「スペースインベーダー」や「ダライアス」というタイトー往年のタイトルも
もちろん重要だと思いますけど、
クレーンゲームの仕事も個人的には楽しいですね。
特にクレーンゲームは良くプレイするので思い入れがあります。

石川 そう、地道なものを作るのも、もちろん楽しい。
自分たちとしては、「ダライアス」であろうとメダルゲームであろうと、
多少のプレッシャーの差はあっても重要度は変わらない。
まあ「タイトーがある限りZUNTATAは仕事してます」ということで(笑)

小塩 クレーンゲームの音って超楽しいですよ(笑)
クレーンゲームってコアなゲーマーには
あまり響かないかも知れないですが、実はいいんですよ。

例えば同窓会で久しぶりに会うじゃないですか。
「お前、何やってるんだ?」って言われた時に、
「ゲーセンにあるクレーンゲームのサウンドを作っているんだ」と言うと、
みんな「おお!」と言ってくれる。これは得だなと。

石川 そういうのはあるかも知れないね。
「ダライアス」やってると言っても知っている人は限られるし、
知らない人にとっては、「・・・はぁ?」だし。。


(一同笑)


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