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DETUNEに聞く、M01とこれから

その2:実際に「M01」を起動。これは凄い!


斉藤 それでは実際に動いているところを紹介していただけますか。

岡宮 はい。それでは。

この画面、当時の最先端の近未来な感じのデザインが、
逆に古くて良いですよね。

佐野 (インタビュールームの古いブラウン管TVを差して)

そのノリで、もう少し経ったら、
ブラウン管がデザイン的にかっこよく感じますよ。(笑)

写真



こうして、いよいよ「M01」が起動!

記事をご覧の皆さんは、
この公式動画をご覧になれば雰囲気が分かると思います。



佐野 基本的なシステム、操作の仕方は「DS-10」と同じなので、
「DS-10」に馴染みのある人にとっては使いやすいと思います。

「ピアノロール」という打ち込み画面では、
範囲選択して動かしたり、コピーなどもできる。
このあたりの操作は、「DS-10」と比べると、よりDAWに近いですね。
(※) ピアノロール ・・・ 音楽の打ち込みで使われている主流の画面方式。
横が時間軸、縦が音階。
(※) DAW ・・・ デジタル・オーディオ・ワークステーション(Digital Audio Workstation)。デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来る様に構成された一体型のシステム。

また、前回好評だった「カオスモード」もあります。

黒い画面をタッチすると右側にいくほど高い音が出るのですが、
どこを押しても音楽的に辻褄が合うようなフレーズを出してくれる。
単音だけじゃなく、2音、3音の和音で鳴らせるのも特徴です。

音色数は342。
内訳は、「M1」の音は全部。
「M1」の後に出た「01/W」というシンセから厳選された音。
そしてそれ以外でコルグさんに選んでいただいた音。
「M1」には入ってなかったような音も入っています。
8トラック(8音色)で、同時に12音が鳴らせます。

あとは「DS-10」と同じく曲を通信で交換することもできますし、
長い曲もつくることができる。

テンポも小節ごとに変えられて、シャッフルや三連符などもできます。

インタビューでは他にも色々な操作をしていただきました。
DETUNEさんは分かりやすい「M01」公式動画をいくつもアップしていますので、
「もっと見たい」という方はこちらをご覧ください(#1〜#4があります)。




■主な仕様 (DETUNEウェブサイトより)
・オリジナルKORG M1の全PCM波形データを含む342種類の音色を搭載した8パート・マルチティンバー音源(最大同時発音数12音/一曲につき7700音までメモリ可能)
・8トラック・ステップ・シーケンサー(1シーンにつき最大64ステップ)
・マスター・リバーブ/ディレイ・エフェクト搭載
・トラック・オーバービュー、サウンド・ブラウザ、シーケンス・エディット、ミキサー、キーボードから成るシンプルかつ機能的な画面構成
・タッチコントロール画面による感覚的なノート/コード/ドラム入力モード
・ワイヤレス通信による楽曲データの交換

佐野 それから「M01」には光田さんの“オケもの”
(オーケストラ楽曲)のデモ曲が入っています。

DS-10のスーパーユーザーでもあり、
作曲家のkoishistyleさんに打ち込んでいただいたものです。
鳴らしてみましょう。

光田康典"Overture"(韓国のMMORPG「Lime Odyssey」より)



佐野 よく見ると、画面右上の点滅が一定のテンポじゃないですよね。
これは細かい音符を打つ時だけ、わざとテンポを早くしているのです。

テンポが早くなると結果的に、ある一定の時間内で細かい音が打てるわけです。
これは昔ゲーム音楽などでも使われた技術なんですね。

でも、誰でもこのレベルの打ち込みができるとは言えない(笑)

岡宮 でも同じ機械ですからね。頑張ればできる。

佐野 前、シンセサイザーフェスタという楽器ショーでこの曲を流したら、
DSから鳴ってるということで、来場者の皆様はもの凄い驚かれました。

高部 事前にYouTubeで聞いていたんですけど、
本当に鳴ってるのか?と思いました。


(一同笑)


岡宮 八百長はしてません(笑)

佐野 その証拠に止められる。(ポーズする)

また、オケものに対応できる音色が入っているから、こういうのが鳴らせる。
「DS-10」ではどう頑張ってもこういうことはできない。

岡宮 企画を詰めていく時、
光田さんはオケもの楽器選びでこだわりまくってました(笑)

それと、テンポをシーン(小節)ごとに変えられる仕様は、
光田さんが「絶対入れて」と言っていた。

佐野 正直な話、僕は「別にいらないんじゃないかなあ」と思ってました(笑)
「別にオケものマシーン作るわけじゃないし」って。

岡宮 でもこれ聴いたら「うわーすげーな」って。

佐野 言うこと聞いといて良かった。


(一同笑)


そしてこのデモ曲を聴いた光田さん曰く、
「良かった、俺が打ち込みやらなくて」って(笑)

凄いんですよ、尋常じゃない打ち込みテクニックで。

当時の「M1」や「01/W」のデモ曲は、いい意味でやり過ぎてます。
職人が打ち込んで、「凄いけど俺には無理だよ」って
頭を殴られたようになるレベル。
それも「M01」でシミュレートしたとも言えます。


前の「DS-10」ではオリジナルの音を作って楽しんでいく。

そして今回の「M01」では、音を選ぶ。

それで打ち込みでいかに“追い込む”ことができるか。
それを楽しむには、本当に最適な商品だと思いますね。

「音を選ぶだけだとつまらない」という話もあるけど、
音を選んで構成する感覚って、オーケストラも同じじゃないですか。

ストリングスとフルート、そこにシロフォンを入れるとああ美しい、みたいな(笑)

そういう感覚を楽しむ意味では、
「DS-10」よりも「M01」の方が楽しめますね。

また、12音といういい制限の中で何とかやり繰りしようと思うので、
それがアレンジや打ち込みでも勉強になると思いますね。

斉藤 昔のゲームの音楽も、制限があって色々なアイデアが出ましたね。

岡宮 「DS-10」の時も感じたんですけど、制限があると燃えるんですよね。

佐野 今、制限がなさ過ぎですからね。

斉藤 何をやっていいか分からなくなります。

佐野 そうでしょ?
しかも「DS-10」と比べたら曲のスケッチを書くのに適している。
移動中でも曲を書けるし、プロでも普通に使える。

あと、ゲーム音楽作曲家さんたちに売り込む時に言うのは、
「凄いんですよ。これ1台でやれて、煩わしいメールも来ないですから」


(一同笑)


高部 それにしても、ゲーム機で音を鳴らす従来のソフトと
比べものにならないレベルですね。

岡宮 他のソフトは「できるだけわかりやすくしよう」と作られてると思うんです。

でも、「DS-10」でそれをやるとぶれる、という気持ちがあった。

佐野 そう。もっと子供向きにしたほうがいいという話もあった。

ただ、僕が初めてシンセに出会ったのが小学4年の時で、
5年でシンセ売り場で遊んでいて、中2でシンセを買った。

子供って大人が思うほど、子供向きなものがいいわけではない。

よっぽど大人よりも情報を入れることができることもある。

だったら本気なのを作ったほうが子供も楽しむんじゃないかと。

今、神奈川県子ども会連合会さんが主催で、
年3〜4回のペースで子どもを対象に、
「DS-10」で音作りを教えるイベントをやっていただいています。

下は幼稚園から中学生まで、
みんな「ビーッ」って鳴らして、変な音ができた時は爆笑したり。

中には入り込めない子もいますが、
分かる子は説明も聞かずにいい音を鳴らしていく。

大人と全く反応はいっしょなので、そういうのを見ると、
この作り方は良かったのかなと思います。

あと、適当にやって演奏させたら、
変な音でも「DS-10」は真面目に延々と再生してくれるわけじゃないですか。
それが子供にとっては凄い魅力的なんですよ。

で、変な音を延々と鳴らす同じソフトとハードなのに、
うまい人がやったら綺麗な音が出るというのが、ちょっとゲーム的。

そういう意味で大人から子供まで、
大きい子供から小さい子供まで(笑)

岡宮 「DS-10」の時も社内でこういう意見が出たんです。

「もう少しカラフルにしたらどうだ」「キャラクターはどうか」

キャラクターって!!!(笑)

佐野 本当に良かったですね、大人の言うことを聞かなくて。

写真

岡宮 僕ら、聞かないですからね。

そして会社まで作っちゃった(笑)


(その3では「M01」でゲーム音楽を打ち込めるか、聞いてみました)