その6:変わらないから、植松伸夫
斉藤 | 植松さんはゲーム業界に長くいらっしゃると思うのですが、 植松さんが見てきて変わったなって思うことはありますか? |
植松 | 僕の経験談でしか言えないけど、 1986年ごろっていうのは なんの仕事にもつけない人がゲームを作っていたんです。 いわゆる映画とかCMの仕事が できなかった人がサウンドを作ったり、 企画を立てたりしていたと思う。 表舞台に出られない人たちが集まって 何か面白いことができないかって始まったにすぎないんです。 どの会社も小さくて、大学の同窓会のノリというのが多かった。 |
斉藤 | 途中のお話にもあった“無茶している”という状態でしょうか。 |
植松 | 試行錯誤が今より随分多かったと思うので、 無茶せざるを得ない環境だったのかもしれないですね。 今はノウハウも出来てきたからお金儲けををする企業になってしまった。 良い悪いではなく、変化という意味で捉えてほしいのですが やりたいことをやっていたのと、 世界に仕掛けるビッグビジネスとはやっぱり全然違います。 |
斉藤 | すごい、しっくりきます。 これも是非、伺いたかったのですが、 植松さんにとってゲーム音楽の特徴というのは どのように考えていらっしゃいますか? |
植松 | 作り手にとっての回答ですが、 どんなジャンルに比べても聞いてもらえるってことですよね。 RPGだったら40時間とか、バトルの曲は何百回にもなります。 そうやって聞いてもらえる音楽は、 ゲーム音楽以外にないんじゃないかな。 |
斉藤 | ありがとうございます。 最後に、ずっとゲームに関わってきて 植松さん自身が変化したことがあったらお聞きしたいのですが。 |
植松 | 自分は・・・・・ (3秒ほどの間) 太った。 (一同、ドッと笑う) |
斉藤 | そ、それだけですか?(笑) |
植松 | 変わったのかなあ? 器用に変わっていけばもっと違ったのかもしれないけれど、 勉強するのも好きじゃなかったですから。 自分なりのやり方でいいと信じていたし、 人にできることを僕がする必要もないと思って誰かになろうともしなかった。 仕事でも、得意分野の人を見つけたら任せるようにしています。 |
斉藤 | なるほど。 |
植松 | 僕がもっと器用で音楽に貪欲だったら、 指揮を振ろうとかしていたのかもしれないね。 自分は自分の価値観で積み重ねていきます。 変わらないといえば、いまだに譜面が苦手。 30年以上やっていても、音符が五線譜を飛び越えていたら 「ドがここだから」って数えていくんですよ。 |
斉藤 | 本当ですか? |
植松 | 本当ですよ。 普段はパソコンで全部やってしまえばいいんですから。 |
斉藤 | 確かに、自分も編曲をするのですが、 譜読みは苦手です。 |
植松 | そうそう。 やっぱり譜面を読むのと作曲ではぜんぜん違うよね。 だから僕でも作れるのよ。 譜面も一応読めるには読めるけど、初見では全然ダメ。 単音ならいいけど、キーボードの楽譜みたいに 黒いのがガーンとくると閉じちゃう(笑) (一同、笑い) |
斉藤 | 植松さんの楽譜は、そういう楽譜が多いと思うのですが。。。 |
植松 | そうだよねえ。 『Final Fantasy』シリーズの曲は作っている僕でも難しいと思います。 弾くことを想定して作っていないからね。 弾きながら作っていたらもっと違うものができていたのかもしれない。 当時はライブで演奏されること自体がありえなかったから。 なので、アマチュア楽団のみなさんには編曲を頑張ってもらいたい(笑) |
斉藤 | 本日は貴重なお話をありがとうございます! 植松さんのお話をヒントにこれからも頑張っていきたいと思います。 |
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