ゲーム、アニメなどの多彩なフィールドで活躍する作曲家・浜渦正志氏。彼が生み出すその流麗かつ美しい楽曲は、多くのファンを魅了しています。今回は、浜渦氏の音楽作りについての考え方やこだわりについてお聞きしました。
また、インタビューの後半ではヴォーカリストのMina氏にも同席いただき、浜渦氏とMina氏のユニット「IMERUAT」の活動についても伺いました。マルチかつ個性的に活躍するお二人の音楽性や人柄に迫るロングインタビューとなっています。ぜひお楽しみください。



【浜渦正志 プロフィール】
ミュンヘン出身。東京芸術大学声楽科を卒業後、『ファイナルファンタジー』シリーズなどのゲーム音楽のほか、『クラシカロイド』などのアニメ、CM、オーケストラ作品などの作曲家として国内外で幅広く活動。IMERUATでは作曲だけでなく、デザイナー、フォトグラファー、ミュージックビデオ制作、映像監督など何でもこなすマルチクリエイター。

【Mina プロフィール】
帯広出身。幼少期よりモダンダンス、アイヌ舞踊、演劇などに親しむ。IMERUATでは看板パフォーマーとして、ヴォーカルのほか、トンコリ、ムックリ、コンテンポラリーダンス、作曲など様々な表現を披露する。

取材・文:hide(永芳 英敬) 撮影:中村ユタカ







RPG好きだった浜渦さん

─ 本日はよろしくお願いいたします。まず初めに、浜渦さんが音楽の道を志したきっかけをお聞かせいただけますか。お父様が声楽家だったそうですが。

浜渦 はい。やっぱり、普通の家庭に比べたら音楽を聴く環境はあったと思いますね。音楽を勉強するってことはあんまり無かったんですけど、ただやっぱり何かと聴こえてくる機会は多かったですね。母親もピアノをやっていましたし。それで好きになっていったのはありますね。ただ、当時は親の仕事を見ていて大変そうだったので、音楽以外の道に進みたいと思ってたんですけどね。

─ そうだったんですか!

浜渦 ええ。自分にはすっごく大変そうな仕事だなと思ったので、将来の夢は音楽以外って言ってました。だけど、中学生の頃になると多感な時期といいますか、やっぱりいろんな音楽を聴いて好きになるわけですよね。で、「作ることって面白いかな」と思うようになってきたんです。

─ ちょっと興味が出始めてきたんですね。

浜渦 はい。しんどさよりも、楽しさや興味が上回るようになってきたということかなと思いますね。

─ ところで浜渦さんは、昔からゲームがお好きだったそうですね。『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズも、第1作からプレイされていたそうで。

浜渦 やりましたね。ロールプレイングゲームが特に好きでした。うちはパソコンが無かったのでもっぱらファミコンでしたけど、『ドラクエ』とか『FF』などのRPGを中心にやっていましたね。

─ 特にお好きだった思い出のゲームはありますか?

浜渦 『ドラクエ』はゲームとして特別面白くできていると思ってまして、あれはやっぱり興奮してやりましたね。そのほかはわりと横並びなんですけど、でもやってる時はやっぱりすごく楽しんでやってましたね。最後まで絶対クリアしてやろう!と思って。

─ 『ドラクエ3』とかもハマりましたか?

浜渦 ハマってましたね、すごく。

─ 冒険の書が消えちゃったりはしましたか?

浜渦 消えたことは無かったと思います。『ドラクエ2』で「復活の呪文」を書きとめるのに失敗しちゃったりは何度もしましたけどね(笑)。

─ あああ、「じゅもんがちがいます」って言われちゃうアレですね(笑)。ところで、浜渦さんがゲームをプレイしていた時には、やはりゲーム中に流れる音楽にも関心があったのでしょうか。

浜渦 そうですね。ゲームっていうのは、映画やアニメとかとは違って、自分が主人公になれるわけですよね。自分の意志で動いて。そこで鳴っている音楽っていうのは、すごく、めちゃめちゃプレイヤーを後押ししてくれるもので、それを聴いたらその情景も浮かぶし、当時ゲームを遊んでいた部屋の情景までよみがえってくるという。それぐらい重要なものとして当時から認識はしていたと思いますね。


“素”で作れた『貧乏神が!』

─ 浜渦さんはこれまでにたくさんの作品を手掛けられてきましたが、特に思い出深いものや、会心の作品はありますか。

浜渦 僕はゲーム会社に入ってそこから勉強したようなところがあるので、スクエニ時代に作ったものは、今から振り返ると「まだまだだったな」って思うところがいっぱいありますね。だから、スクエニ時代の作品で会心の作っていうのはなかなか無いんですよね。アニメとかも全部含めたりすると、けっこうポップなアニメのサントラが自分の中では一番よくできたなって思ったりします。自分で企画しているIMERUATの曲は別として、自分の劇伴の中で一番今でも聴けるのは、『貧乏神が!』っていうアニメなんですよ。パッと聴いたら非常にポップで、オーケストラとかもないですし、「えっ?」って思われるかもしれないんですけどね。でも、なんか“気楽に自分らしく作れたもの”という意味ではそうなんです。

─ わりと、浜渦さんの“素”が出せた感じなのでしょうか。

浜渦 そうですね。作った時に初めて気づいたんですけど、ゲームと違ってアニメは制作期間が短いんですよ。あの時は3週間で40何曲かくらい書かないといけなくて。あんまり小細工する暇とかもないので、ひたすら書くだけなんですよ。そしたら、自分の“素”がいっぱい出てきて。今でも素直に聴けますね。


緻密に組み立てて作った『FFXIII』の音楽

─ ほかに、会心の出来だった作品はありますか?

浜渦 せっかくなのでゲームの話もさせていただくと、いろんな意味でよくできたのはやっぱり『ファイナルファンタジーXIII』かなと思いますね。もちろん『ワールド オブ ファイナルファンタジー』とか、最近のやつはこなれてきた良さっていうのがあるんですけど、『FFXIII』はいろんなコンセプトとかを考える時間があって、満を持して作った部分があるんです。「こういう曲もやっておきたかったな」っていう後悔が無いように、いろんなジャンルやいろんな作戦を立てて作って。それを達成できたという意味では、『FFXIII』は一番良かったですね。

─ 緻密に組み立てて作れたのですね。

浜渦 そうですね。やっぱり大作でプレイ時間もとても長いゲームでもあるので、劇伴として盛り上げていくだけではなく、途中でハッとさせたりする必要もあって。ディレクターの鳥山さん(鳥山求氏)の曲の配分にもすごく助けられたんですけど、途中でちょっとゲームの本編から少し離れたような感じの曲を流すことで清涼感を与えるとか。そうやって、サウンド面でも方向性をちらっと変えたりとかして。そういったいろんな仕掛けも含めて、「どうやったら、より面白く最後までプレイできるか」ということを考えることができたかなと思います。

─ なるほど……。そういえば、浜渦さんが『FFXIII』のサントラのライナーノーツで書かれていたのですが、通常バトル曲の「閃光」も、自分が聴きたいRPGのバトルテーマはなんだろう?と、すごく考えて作られたそうですね。

浜渦 そうですね。たとえば通常バトル曲なんかは、ひとつのRPGで1000回とか平気で聴くことになるわけじゃないですか。最初にパッと聴いて「あっ、かっこいい」と思っても、100回ぐらい聴いて飽きるような曲だとしんどくなってくるわけですよ。そうじゃないようにするためには、どんな音楽にしようかなと。500回くらい聴いてから、逆にもっとハマっていくとか……そういう音楽ってどういうもんなのかな、とはよく考えていましたね。


作品をいかに理解するか

─ 浜渦さんが、音楽を作曲するうえで心掛けていることや、大切にしていることはございますか。

浜渦 ずっとこういうのってなかなか言葉にできていなくて、最近やっと話せるようになってきたことなんですけど……。月並みですけど、やっぱり、その世界観やキャラクターやシナリオをいかに理解するか、ってことですね。

アニメや映画だと、どんな音楽が必要で、どんなシーンに合うかを提案してくれたりする音響監督さんがいるんですが、監督と三人で一緒に話をすると、世界観への理解がすごく早くなるんですよ。「このキャラクターはこうなんだ」、「このシナリオってこういうことを本当は言いたいんだ」とかっていうのがダイレクトに伝わってくる音楽発注リストを貰ったりして。「このキャラはこういう性格だけど、でも実は陰ではこんなところもあるので、そこをちょっと出したい。できたらピアノだけみたいな感じがいい」とか書いてあったり。それに対して「いや、それならむしろこういう曲の方が面白いんじゃないですか」って提案したりしてミーティングが盛り上がります。そうやって「ああなるほど、こういうものを作りたいんだな」って理解がどんどん深まると、曲想も本当に浮かびやすいんです。ゲームには通常、そういった音響監督がいないのでディレクターと作曲家が兼任するわけですが、『FFXIII』の鳥山さんなんかはそれが高いレベルで出来る方だったと思います。

─ 監督さんが意図するものを理解すると、スムーズに作れるわけですね。

浜渦 そうですね。「あっ、これはこういうシーンなんだ」とか、それが分かるともうガンガン作れるんですよね。監督やディレクターが何を表現したいかはっきりしないときは、作ったとしても「本当にこれでいいのか?」とか、なかなか分からなくて迷うんですけど。やっぱり、世界観をどう理解するかっていう。そこを考えることが、僕はかなり優先していることかなって自分で最近思うんです。それによってその作品がいかに前進するか、良くなるか、と。

─ 作品の推進力になるための音楽、ということですね。

浜渦 そうですね。たとえばシーンにばっちり合っていても、そういった曲ばかり聴きながらプレイしてると結構お腹いっぱいになってきてしんどくなっちゃうこともあるので、鳥山さんとやった時みたいに、あえてちょっと外した曲を入れたりすることはあります。


キャラクターに愛情を持って作る

浜渦 でも振り返ってみると、たいていの作品で何曲かは、シーンやキャラクターのことを考えて、すごくノリノリで作ってることがよくあるんですよね。1人で踊るようにして作ったりとか(笑)。たとえば、『ライトニングリターンズFFXIII』のエンディングとか作りながら泣いてたんですよ、ボロボロと。なんか、自分の過去の発言を振り返るとすごいアーティスティックなことばっかり考えているように取られることを言っていたかなとも思うんですが(笑)、作っている時はやっぱりキャラクターのことを大ファンみたいにめちゃくちゃ愛情を持っていますね。「ヴァニラが今こんなこと話してる。でもこういう曲をつけてあげたら、もっとこの子の感情が出てくるんじゃないか」とか。 お恥ずかしい話ですけど、女性が主人公だったりヒロインが前に出てくる作品は、かなり恋するようにキャラクターを理解しようとするのはけっこう昔からやってたなあと思います。そうすると、自分にとって大事な存在なので、ちゃんと誤解のないように視聴者の方やプレイヤーの方に伝わるようにしなきゃいけないと思うんです。中にはぜんぜん好みじゃないキャラクターもいるんですけど(笑)、無理矢理にでも愛情持って作らなきゃって思って作ると、好きでもなかったタイプの女の子が好きになった時のドキッ、みたいな感情が芽生えたり(笑)。

─ 本気でキャラクターを好きになって、愛情を持って音楽をお作りになっていたんですね。

浜渦 そうですね。それをさせてくれる監督さんとかディレクターさんには、いつもすごく感謝するんですよ。先ほどお話しした『貧乏神が!』とか、『クラシカロイド』を作っている藤田監督(藤田陽一氏)は、何をしたいかがすごく伝わってきて、キャラクターもボンボン見えてくるんですよ。

どれがとは言いにくいんですけど、過去のゲームで、そういうものが薄い作品はすっごくしんどかった、というのはあります(笑)。どういうものを作りたいのか分からないっていう。でも結果として、じゃあもう自由な解釈で作ろうと思ってやったら、それがいい結果になることもあります。そういう作品に限って音楽の支持が高かったりするので、一概には言えないんですけど(笑)。

でも作りやすさっていうことを考えると、やっぱり完成する前からキャラクターとかシナリオがしっかり見えてくる作品がやりやすいですし、そういう方がひとりで興奮してノリノリで作れる、っていうのはあるんですよね。それは今でも全然変わらずというか、ますますあるかもしれないです。

─ なるほど。やっぱり、そういう風に作った楽曲のほうが、浜渦さんご自身の中でも「いい曲ができた」と感じることが多いのでしょうか。

浜渦 そうですね。正直、ゲームやアニメの世界観とは関係なく、曲としていいものを作ろうとしても、そこまでガッとこないんですよ。それなりにはいいものになりますけど、やっぱり“突き動かされて作ったもの”のほうが、音楽の機能的にも構造的にも、気づいたら良くなっていることが多いですね。

よくあるのが、ゲームやアニメの開発の最後のほうで、たとえば全部で80曲くらいあったら79曲目くらいに作った曲というのは、もう世界観をだいぶん理解したうえで作るので、やっぱりクオリティが高くなるんですよ。最近もあったんですけど、『クラシカロイド』で最後に作った曲は、アニメ全体を総括するような感覚で、すごく愛情を込めて作れました。僕は普段は自分の曲を聴くことってあんまり無いんですが、その曲は自分で何度も繰り返し聴けるようになるっていう。そういうことはありましたね。

─ 世界観全体を理解しきって作った楽曲は、いいものになるんですね。

浜渦 ええ。高確率でそうなると思います。

─ 浜渦さんが楽曲を作る時は、キャラクターのイラストやシナリオといった、作品の設定資料から着想を得ることが多いのでしょうか?

浜渦 はい、基本的にほとんどそうですね。美術の設定画ですとか。あと、よくやるのはキャラ表を見えるところに置くことですね。キャラクターの絵を壁にペタペタって貼って、それが目に飛び込んでくるようにすると、曲が浮かびやすいんです。

─ 壁一面にキャラクターを貼るわけですか。

浜渦 『クラシカロイド』の時にもそれをやったんですが、すごく、やっぱりこれいいなと思いました。


煮詰まったら、同時進行!

─ 浜渦さんは、音楽制作の際にはわりとスムーズに作られるのでしょうか? 煮詰まったりすることはありますか?

浜渦 あんまり煮詰まることはないかも(笑)。まあ、たまにひとつのプロジェクトの中で何曲かあっても、「もうちょっとグルーヴ強くしたほうがいいのかな」とか、「なんかノリが弱いな」とか、「やっぱり打ち込みじゃなくてレコーディングしようかな」とか。そういうところで悩みはしますけどね。

─ ひたすら考えている感じなのでしょうか。

浜渦 気分転換に散歩とか、他のことをするってのは僕はあんまりしないですね。ずっとパソコンに向かってるばかりです。ネットしたり。あ、でもあれかな、Photoshopとかでデザインして遊ぶのが好きなので、そんなことをやるとちょっと気分が晴れたりすることはあるかもしれないですね。スクエニにいた頃は、今と比べて技術も手数も少なかったので「くそっ、だめだー!」ってことは多かったですね。

で、そういう時によくやっていたのが、“複数の曲を同時進行で作る”という方法でした。「この曲、うまくいかないなー」ってなったら、すぐやめて別の曲を作る。で、それをどんどんローテーションでやっていくと、またさっきの曲に戻ってきた時に、客観的に聴けるんですよ。「あれっ、ここ直せばええだけやったんや」って。やっぱり、1曲ずーっとやってるとだんだん視野が狭まってきて、どこが問題が分かんなくなってくるので。

アニメの劇伴のほうが、ボリュームが多くても作っていて意外とうまくいくのは、ゲームとは違って1分か2分くらいの短い曲が多いからかもしれないですね。パッパパッパと次々作るので、考える間もなく次の曲に行くっていう。それを何回かローテーションするので、客観的に聴いて、「あ、じゃあここ直せばOK」みたいな。ゲームの曲の場合は、4分、5分くらいのループ曲とか作らないといけないですからね。もしかしたらゲームのほうが煮詰まりやすいかもしれないです。

─ なるほど……そういう意味では、ゲームの曲のほうが、作るうえでの難易度は高いかもしれないですね。

浜渦 あと、ゲームは、企画がまだかなりぼんやりしてるところから一緒に作ることが多かったんですよ。最近はだいぶ出来てきてから発注を受けることが多いですけど。やっぱり、シナリオやキャラクターがぼんやりしてると、何を作っていいのかよくわからないことも多いんですよね。アニメのほうは、音響監督さんの存在があったりとか、歴史が長い分もあると思うんですけど、そこはわりとシステマチックになっていて。どうすれば作曲家さんが作りやすいか、というのはある程度ゲームより進んでいるのかなと。それでパパっと作りやすいので、煮詰まる確率も低いのかなと思いますね。


作曲家としての大変さと喜び

─ 長年作曲家として活動されていますが、「大変だなあ」と思うことと、「この仕事をしていてよかったなあ」と思うことはありますか。

浜渦 大変なのは、体力ですね。やっぱり詰め込んで作業している時は、すごくしんどいです。またなぜか依頼というのは重なるんです(笑)。身体が追いついてこないときが一番辛いですね。

よかったなと思うのは、いわゆるゲームやアニメの音楽というものは、劇伴という言い方をしますが、作品の情景とかシナリオとか、そういったものを応援したり、支えたりという機能を持っていますよね。だから、人を勇気づけるとか、沈んだ気持ちを浮かび上がらせるとか、そういった機能もいっぱい持っていると思うんですね。そういう音楽を聴いて、自分自身がけっこう救われたりするんですよ。それを自分で作るわけですからやり甲斐があります。

また、僕のファンの方で深い悩みを抱えていて、もう人生限界だ……!って時に僕の曲を聴いて救われたと言ってくださる方が、けっこう複数いらっしゃるんですよね。そういうお話を聞くと、「ああ、作ってて意味があったなぁ」と思いますね。

僕自身も、「ああ、そういう風に思ってくれるんだったら、もうちょっとやれるかもしれないな」と勇気づけられるというか。スタッフの皆さんが支え合って作ったゲームから発したものが、リスナーの方に伝わって、今度は僕が逆にお客さんから励まされるというか。それは、作曲家をやっていてよかったなと思いますね。


『FFVII』の「片翼の天使」秘話

─ 少し話は変わるのですが、せっかくの機会ですのでお伺いさせてください。浜渦さんは、『ファイナルファンタジーVII』の「片翼の天使」でコーラスのお1人として参加されていましたよね。昔雑誌に掲載された『FFVII』のサントラの広告で、植松さん(植松伸夫氏)の書いた楽譜が散りばめられていたものがありまして。

浜渦 あー! はい、覚えてます。

─ その広告の中にあった「片翼の天使」の楽譜の中に、植松さんの手書きで「疑問、ご質問は浜渦くんまでどうぞ」と書かれていたのが気になっていたのですが、当時、コーラスのレコーディングについては浜渦さんも関わっていらっしゃったのでしょうか?

浜渦 たぶん、植松さんからメロディは渡されたと思うんですよ。で、その譜割りのチェックとか、ここはこうしたほうがいいとかっていうのは僕がやって。あとはレコーディングの時も、僕は一緒に歌った側ですけど、ちょっとした指示は出していましたね。

─ 浜渦さんが声楽をやられていたということで、植松さんから依頼があった、というわけですか。

浜渦 おそらくそうですね。だいぶ昔の話なので、どういう経緯かあんまり覚えてないんですけど、僕が大学で声楽やコーラスをやっていたからだと思います。「じゃあ、ちょっと大学時代の友達を集めてやってみてもいいんじゃないですかね、そんなに悪くはないと思うんで」って言ったのかもしれません。

─ レコーディングはスタジオで行ったんですか?

浜渦 そうですね、当時のスクウェアのスタジオです。一応レコーディングするための小さなブースもあって。そこに8人入って、ダビングして録りましたね。


『FFVII』の社長はハイドンを聴く!?

─ ありがとうございます。続いて、またものすごくマニアックな質問で恐縮なのですが、『FFVII』で、ミッドガルのプレートが落ちてスラム街が壊滅してしまうシーンがありますよね。あのシーンの時に、神羅ビルから街を見下ろす神羅の社長が映って、そこでドイツの作曲家ハイドンの楽曲「THE CREATION」(オラトリオ「天地創造」)が流れます。

以前、植松さんがインタビューでお話しされていたんですけど、植松さんの中では、神羅の社長が部屋の中で音楽を聴いているという脳内設定だったそうなんです。で、浜渦さんに「こいつ、どんな曲聴くと思う?」と聞いたそうなんですね。そしたら浜渦さんは「ハイドンなんかええんちゃいますかねぇ」と提案されたそうで。


浜渦 たしかに、ハイドンを勧めたのは僕で間違いないですね。植松さんからその話を聞いた時に、明快なクラシックが怖いシーンで流れるとより怖さが出るなと思って、フッと浮かんだのかもしれません。で、その曲の楽譜があったのでそれをシンセで打ち込んで、その歌を原大介さんという、何回か僕と音源の仕事をやってくれた、声楽をやっている人間に歌ってもらいました。それもスクウェアでレコーディングしたかもしれないですね。


浜渦氏の劇伴の究極形、IMERUAT

─ ありがとうございます。では、ここからはMinaさんにも同席いただいて、IMERUATの活動についてお聞きしていければと思います。まずは、IMERUATをまだご存知ない方のために、改めてIMERUATとはどのようなユニットなのかについてお聞かせください。

浜渦 じつは、その部分が一番言葉にできていなくてですね。IMERUATというユニットは、一言ではなかなか言えないんですよ。ジャンルもばらばらですし。

Mina 「自分たちがやりたいことをやるユニット」でいいんじゃないですか?(笑) あとは、ゲームやアニメの劇伴って、ストーリーがあって、ディレクターさんの依頼に音楽で応える、という形だったじゃないですか。でもIMERUATは、依頼者が自分自身なんですよ。

浜渦 僕は、“情景に曲をつける”ことが若いころから好きだったから、ゲーム音楽やアニメの音楽をやってるんですけど、実はIMERUATはその究極形かなと思うんですよね。自分がクライアントで、作曲家に依頼する側になれる、と。世界観を提示する側になれるんです。自分でテーマや映像やデザインを作って、「これに曲をつけろ」っていうこともできるし。普段はディレクターさんや監督さんが持っているものを、自分で発信して、そこに曲をつけられるんです。だから、ある意味今までやってきた劇伴を究極の形に自己完結するっていう……それができるプロジェクトかなと思います。







2人の出会い

─ 浜渦さんとMinaさんは、いつごろ、どのような形でお知り合いになったんですか?

浜渦 10年くらい前かな、共通の知り合いの版画家さんがいたんですけど、その人の展示会で会いました。Minaは、当時は別のアーティストグループで活動していたんですよ。

Mina アイヌの文化活動みたいなことをしていました。最初に浜渦を紹介された時は、ゲームを全然やったことがなかったので、「ファイナルファンタジーとかの音楽作ってる人だよ」って言われてもあまり分からなかったんですけど(笑)、自分たちがやっていることに音楽の面で助けてほしいなと思って、ずうずうしくお願いさせていただきました。

浜渦 僕もアイヌ民族の文化とかが昔からずっと好きで、自分なりに研究ってほどでもないですけど勉強してたんですね。たぶんMinaからしても、アイヌのことをまったく知らない作曲家よりも、ある程度知っている人のほうが良かったっていうこともあって。

『FFXIII』の時に、民族楽器のムックリという口琴をやってもらったんですけど、歌声もかなりよかったので、じゃあゲームの中で歌ってみたらどんな感じになるかな?とやってみたら、「すごくいいな!」ってなって3曲もお願いすることになったんです。また、彼女はそもそもダンサーでもあり、パフォーマンスする人間でもあったので、もっと幅広く活動できるんじゃないかなと思って。それで2011年にIMERUATの活動をはじめました。


お互いの魅力

─ お二人がそれぞれ、魅力的だな、素敵だなと思うところはありますか。

浜渦 まず声ですね。きっちり歌い上げるような、いかにもヴォーカリスト!という人と違って、Minaの場合は、たくさんの楽器の中の一部みたいに入ってきてくれるので、表現の幅が劇的に広がるんですよ。あと、ステージでのパフォーマンスとか、僕が持っていない部分をことごとく持ってるみたいな。それがすごくありがたいですね。

Mina そうですね……一番すごいなと思うのは、才能がいろいろあるなと思って。作曲もそうですけど、他にも絵や詞を書いたり、いろいろ映像とか写真とか編集とか、そういうマルチなところが。作曲以外はセンスでやっている部分が多いと思うんですけど、自分の完成イメージみたいなものがすごくあって、それに近づけていくパワーがすごいなって思いますね。私はどちらかというと、昔から演劇とかダンスとかパフォーマンスするのが好きで、何かをひとつの無からつくりあげるみたいな、そういうクリエイタータイプではないので。浜渦さんは外に立つのはちょっと苦手だけど、作品を作り上げて私が外に発信するという。そういう役割分担みたいなものがうまく機能しているのがIMERUATなのかなと思います。

─ お互いを見事に補いあっているのですね。

浜渦 そうですね。性格もぜんぜん違うんですよ。でも、表現したい方向だけはすごく合致しているんです。だから続いてるのかなと思います。

Mina けっこう私たちって、音楽をやりたくてやっているというよりも、音楽は表現のひとつの手段というか。自分たちが日常的に考えていることとかメッセージとか、感じてることや社会に発信したいこととかを、表現する手段として音楽を使ってるみたいなところがあると思うんですね。だから、そこがたぶん一緒の価値観だと思うんです。

浜渦 たとえば「こういうメッセージを込めた曲を作りたい」って思って、それを文章とか詞にしてMinaにメールで送ったりして。「ああ、これすごくいいね!すごく共感する! じゃあそういう曲を作ろう」ってなったり。やはり究極の劇伴みたいなところがありますね。

僕は『サガ フロンティア2』で絶対音楽的な作り方をしたことがあるので、自分はそういう人間かなと思ったこともあったんですけど、さっきも話しましたとおり、シナリオや世界観にめちゃくちゃ引き込まれて、それが原動力で作るタイプだったんですね。IMERUATはその世界観を自分で作れるので、引き込まれ方が半端ないわけです(笑)。それでどうやったらそういう世界観を形にしていけるかと2人で話すんですが、音楽というやり方もあれば、ダンスで表現することもいいと思うし、映像作品にしたほうがいいとか。そういったことをフレキシブルに考えられるんです。IMERUATって、ひとことで言えば音楽ユニットかもしれないですけど、基本的には2人で表現したいことを、自分たちの手の力でなんでもやるユニットだと思います。

─ なるほど。非常にユニークで、柔軟性があるユニットだと感じます。

Mina なんでもありなので(笑)。

浜渦 お客さんといっしょに体操するとか(笑)。


「イメルア体操」誕生秘話

─ 今お話が出たのでお聞きしますが、ファンのみなさんと一緒に体操を行う「イメルア体操第四」は非常にユニークな試みですよね。あれはどちらの発案なんですか?

浜渦 あれは僕ですね。





─ どんなきっかけで生まれたのでしょうか。

浜渦 僕は集団行動が苦手なんですよ。ラジオ体操って、ちょっと日本的というか。みんなで一緒に同じ方向を向いて、全体行動で。悪い言い方をすると全体主義っぽいというか(笑)……僕はあれがちょっと苦手だったんですが、でも、1人用のラジオ体操があったら、気楽にできるんじゃないかなと(笑)。

あとラジオ体操って、「今日も1日頑張りましょう!」って言うじゃないですか。でも、頑張りたくない日ってあるよなぁと思って(笑)。

─ (笑)。はい、すごく分かります。

浜渦 そういう、いろんな思いが混じって出来たんですね。といってもせっかく1人用なのにお客さんとやってるんで、めちゃめちゃダブルスタンダードなんですけどね(笑)。

─ ライブで、ファンのみなさんも一緒になって体操されてますからね。

浜渦 そうですね。けっこう皆さんちゃんとやってくれます。あの強制感が本当は良くなかったはずなのにな、と(笑)。

Mina けっこう、初めてのお客さんでも、「皆さんでやりましょう」って言ったらすぐパッって立ってくれるからありがたいなと思いますね。


ライブでは奏者さんも血が騒ぐ!楽しむ!

─ 2018年1月8日には「イメルア新春雷鳴大劇場」というライブが開催されますね。2017年にライブツアーがあって、その追加公演という形ですけれども。まだIMERUATをご存知ない方に向けて、ライブのご紹介をお願いいたします。

Mina そうですね……「IMERUATは音源だけより、ライブに行ったほうが絶対いい!」ってよく言っていただけるんですけど、日本の第一線で活躍されている素晴らしいミュージシャンの方たちと一緒にIMERUATの音楽を生演奏でやって、さらに映像もあってパフォーマンスもあったりして、総合芸術空間みたいな感じです。

浜渦 IMERUATは、デザインや映像やダンスといった音楽にとどまらない活動を普段からしているんですけど、ライブはそれを体現しているように思いますね。単純に音楽だけを聴くんじゃないっていう。ライブではいろんなことをするんですけれども、いろんなものに手を出した時に全部バラバラでクオリティが低くなってはいけないので、やっぱり音楽の部分は僕の責任として、かなり力を入れているつもりです。

あと、ライブに出演してくださるミュージシャンの皆さんは本当にすごい人たちばかりで、うちみたいな小さいユニットに…っていつも思うんですが、めっちゃくちゃ楽しんでくれるんですよね。「普段なかなかできない音楽だからやりたい!」って言って来てくれてます。

Mina 自分のミュージシャンとしての能力が発揮できるというか、血が騒ぐみたいな感じがあるみたいで。「IMERUAT大好き!」って皆さんに言っていただけるんですよ。

浜渦 リハーサルの時がおもしろいです。リハーサルの時に新しい曲とか見せると、いっつも「あー! むずかしー!」と青ざめる(笑)。

Mina うん(笑)。すっごく難しいらしいんですよ。

浜渦 僕が「すいません、もうちょっと譜面、変えたほうがいいですかね?」って言っても「いや、これをやりたいです! これをやれたら絶対すごいことになるので!」って言ってくれて。演奏者として培ってきたものを発揮できると思ってくださってるようです。


お客様の声に応えたい

─ ほかに、ライブの注目ポイントがあればお願いいたします。

Mina そういえば今回、ゲームの楽曲も数曲やるんです。IMERUATのファンの方で、最初のファンタジーロックフェスでやった「閃光」のボーカル入りバージョンがすごく好きって方が何名かいらっしゃるんですけど、「もう1回聴けないかな」とか、ツイッターでいつもつぶやいてらっしゃるんですよ(笑)。これはぜひ応えてあげたいと思って、今回久々にやります。

浜渦 Minaはお客様の顔を覚えるのがものすごく得意なんですよね。で、「あのお客さんはこういうことを望んでいる」、「このお客さんはこういうことをしたがってる」とか、そういうのを察知するような才能があるんです。で、お1人お1人になにかしたいっていう。接客大好きなんですよ。

Mina 今年、IMERUATでカフェを企画して、一日営業したんですけど、むちゃくちゃ楽しかったですね。浜渦がマスター、私が接客をして。

浜渦 ライブでも、ひとりのお客様の声が聞こえてきてそれが多くの人に喜んでもらえると思ったら、「じゃあ、あの曲やったほうがいいんじゃない」とか。そういうものでけっこう簡単に演目が変わったり増えたりするんですよね(笑)。Minaがお客さんを喜ばせるのが本当に大好きですから。

─ お客様の声に応えたい、という想いがあるわけですね。

Mina はい、それはすごくありますね。

あと、『ワールド オブ ファイナルファンタジー』で、私が歌っている「ナインウッズヒル・ワールド」という曲があるんですけど、それもやります。まだIMERUATをご存知なかったお客様にも是非いらしてほしいですね。名前は知ってたけどライブに行ったことがないという方も、行ってみようかなって思ってもらえればうれしいですね。来たら絶対たのしいと思います!

─ ツアーでは全国各地を回られていましたがいかがでしたか?

Mina やっぱり今まで行ったことが無かった土地に行くと、はじめてのファンの方とかに出会って、浜渦の音楽が10年とか20年くらい前から大好きだったファンの方とかが、泣きながら喜んでくれたりするんです。「なかなか東京まで行けないんですけど、ここまで来てくれてありがとうございます」って言ってくださる方も多くて。そういう声を聞くと、本当に行ってよかったなぁと思います。

浜渦 うん。やってよかったなぁって感じです。ちなみに今回のツアーで金沢公演をやったのは、石川県にめちゃめちゃすごいIMERUATのファンの方がいらっしゃるからなんですよ。その方は、僕が作ったミュージックビデオの撮影地を自分で全部探して、北海道まで行って巡礼するとかみたいなことをものすごくやるんですよ。

─ ええー!

Mina 映像から場所を探してね。

浜渦 うん。絶対見つからんだろうと思っていたようなところをずーっとくまなく探して見つけたりとか。

─ すごいですね…!

浜渦 いつも東京まで来ていただいているので、じゃあ今度はこの人のところまで行こうと。

Mina 「今度はあたしたちから!」みたいな感じでね、金沢まで。個人的に行ってみたかったのもあって。

浜渦 思っていたよりも多くのお客様が来てくれました。お客さんの半分くらいが東京から来てくれた方でしたけど(笑)。あと、愛媛から来てくれた方もいらっしゃいましたね。ありがたいです。




妥協せず、真摯に作品と向かい合う

─ IMERUATの活動で、一番大切にしていることはありますか。

浜渦 そうですね……。どれも大事なのか、一番というのは特にないかもしれないですね。IMERUATは自分がクライアントなので、クライアントの浜渦が、作曲家の浜渦に「こういうの作れ、いついつまでに」と言うわけです。で、作曲家のほうが「ちょっと間に合わん」と言ったら、クライアントが「そりゃそうだよね」ってなってしまうんですよ(笑)。

Mina だからけっこう遅いっていう。

浜渦 遅い(笑)。まあ、そこはあんまり引きずったりすると供給の時間が追い付かなくなって立ちいかなくなるので、そこは厳しくしないとな、っていうのは多少気をつけてます。

Mina そこ!?(笑) ……あ、でも横から見ていて思うのは、絶対妥協しないよね。

浜渦 妥協は出来ないです。

Mina やっぱり自分のやりたいこと、自分の表現したいことだから、絶対妥協しないですね。でもIMERUATに限らず、浜渦正志という作曲家を見ていて思うのは、誠実だなあって思いますね。ものづくりに対して、「これくらいでいいでしょ」とか、「こういうのやったら受けるでしょ」みたいな……そういう打算とか手抜きとかが本当に無いんですよ、どの作品にも。「こういう作品だったら、絶対こういう曲がいい」とか、「こういうものを求められたけど、こっちを提示した方がいいはずだ」とか、作品やものづくりに対して本当に誠実なんです。たぶん、そういうところが、ディレクターさんにもお客様にも伝わっているんじゃないかな、というのは横から見ていて思いますね。

─ 真摯に作品と向かいあっているんですね。

Mina そうですね。たぶんそうしかできないと思います(笑)。

浜渦 それでいっつも疲弊するという(笑)。たとえば、劇伴で何十曲って作る時とかに、「この曲、あんまり手をかけてないかもしれないから、もうちょっと何とかしてあげなきゃ」みたいな……自分の子どもみたいな感じに思っちゃうんですよ、どうしても。でも、それで作業が増えて自分を疲弊させたりして。不器用だなってすごく思いますね(笑)。

─ いえ、でも、それだけ作品に対して真剣に取り組まれているということですよね。

Mina 作品への愛があるってことじゃないですかね。

浜渦 「この仕事はプロジェクト自体上手く行ってない気がするなあ」って思ったときなんか、「シナリオもよくわからないし、じゃあその分、このキャラクターめっちゃ愛そう」と考えたりします(笑)。不安な作品が生まれそうな時ほど、逆に音の方で…と思ったり。

Mina そういうものこそ予算以上にレコーディングにお金かけちゃったりとかね。

浜渦 そうそう。そういうのがヘタなんですよ(笑)。でも、やり甲斐があるのでそれでいいのかなって思いますけどね。

─ やはり、生み出す音楽はいいものにしたいという思いがあるのでしょうか。

浜渦 いいものっていうか、“存在意義”があってほしいんですよね。その曲がそのシーンで鳴ることによって、「ああ、生まれてよかったね」みたいな感じで。これは最近思い出したことなんですけど、『ダージュ オブ ケルベロス ファイナルファンタジーVII』の「A Proposal」っていう曲がありまして。「このゲームにはこういう曲があってもいいはずだ」と思って作ったんですよ。曲自体はそんなに悪くないし気に入ってるんですけど、使いどころがなかなか無くて。「どこに使っても昼ドラの愛憎劇みたいになる」って言ってみんなで笑ってたんですけど、そういう無駄な子どもを生んじゃったみたいな感じがすごくつらいんですよ。

Mina 作ったからには、いちばん活きるところに立ってほしいよね。

浜渦 うん。一番いいステージに立ってほしいっていうのがあって。だから、こちらが意図したところで曲がちゃんと鳴ってたりすると、やっぱりうれしいんですよ。あるキャラクターのテーマとして作ったつもりの曲が「シナリオの事情で使う場所をちょっと曲を入れ替えたりするかもしれません」ってこともあったりもするんですけど、その曲が適切なシーンで鳴っていると、「ああ、よかったなぁ」って思いますね。

で、さっき言った「A Proposal」という曲は、曲単体としてなんとか生きていけるようにはしたんですけど、話の続きがありまして。『アライアンス・アライブ』の音楽を作る前に、ディレクターである松浦さん(松浦正尭氏)から、「こういうシーンでこういう曲が欲しい」という、仮の曲を渡していただいたんですよ。60とか70シーンくらいですかね、そのシーンの映像と仮の曲をひとつのフォルダにまとめたものが送られてきまして。大体そういう時って他の作曲家さんの曲が入っていたりするんですけど、全部僕の曲だったんです(笑)。で、その中に「A Proposal」があって。ああ、作ってよかったなと思いました。


今後やってみたいこと

─ IMERUATの今後の活動で、やってみたいことはありますか?

浜渦 今まさにやってることなんですが、「暗殺したい!」という曲のミュージックビデオを作っています。物騒なタイトルの曲ですけど(笑)。僕は今までミュージックビデオを自分で撮って編集して作る、というのはやったことがあるんですが、監督として指揮したことはなかったんです。企画書や脚本を書いたり、撮影クルーを編成したりエキストラを募集したり。撮影は終わったので、あとは編集や、その中に挟み込む、アニメーションやエフェクトのディレクションですね。

Mina 浜渦さんは、さっきも言ったように「自分はこういうものを作りたい」ということがしっかりしていて。それに、いろんなものを自分の引き出しから持ってきて作るセンスがすごくあるなあと思うので、もっと映像作品とかも今後やりたいし、やってほしいなって思います。

浜渦 いろんなことをするのが楽しいし意味があるな、っていつも思うんですよね。音楽とは関係ない、民族の研究だとか、地図を見るとか、映像を作るとか。やっぱりマルチにいろんなことをヘタでもいいのでやっていくと、音楽にもすごくいい影響があるんですよ。Photoshopを使ってる時とDigital Performerを使ってる時の共通点ってすごくあって、Photoshopで得た感性というかヒントが音楽に生きることもあります。

僕は、今回のミュージックビデオでは絵コンテも書いたんですね。初めてでも作ってみると、アニメーターさんの視点とかも少しずつ見えてきたりするんです。ああ、こういう作業をしてるんだな、とか。脚本を書いていたら、ああ、映画監督というのはこういうこと考えてるんだな、とか分かってくるので。やっぱりその後の音楽活動にもプラスになりますし。小さいころに「将来、音楽以外のことがしたい」って言ってましたけど、それを今やってるのかなって思います(笑)。

Mina もしIMERUATで短編映画みたいなものを作るなら、浜渦は曲も自分で作れるし、ストーリーも作れるし、私は演技楽しいし(笑)。そういう総合芸術みたいなものも、映像でやってみたいなというのはありますね。


ファンの皆さんへの感謝

─ 浜渦さんのファンの方々は、とても熱心であたたかい印象があるんです。浜渦さんからファンのみなさんへの印象をお聞かせいただけますか。

浜渦 ライブとかコンサートをやるとすごく思うんですけど、皆さんすごく礼儀正しくて、助かるんですよ。本当にありがたいです。サイン会とかでも綺麗に並んでくれるし。奥ゆかしい人が本当に多くて、1時間くらい待っていただいても全然文句も言わずにいてくれて。中にはその列に並ぶことすら迷惑じゃないか、みたいな感じで端っこにいらっしゃる方とかもいるんですよ。そういう方をMinaが見つけるのがすごくうまくて、サーッって列に誘導してくれたり。IMERUAT以外の時にも、すごくMinaに助けてもらってるんです。

あと、ファンの皆さんは奥ゆかしいだけでなく、熱さもあってですね。あるコンサートをやった時に、台風が来て、コンサートに来れない人がいっぱい出てきてしまったんです。で、当日券を狙って来てくれた人もいたんですけど、そういう人たちに対してツイッター上で「僕の席をあげてください!」っていう人が何人も出てきてくれて。

Mina 「自分は台風で行けないけど、チケットを持ってるから、当日券狙いで来た人に席をゆずります!」と。

浜渦 うん。で、Minaが社長なので、「わかりましたー!」って言ってお客さんとコンタクト取ったりして、それでみんなで席をゆずりあったりしてくれて。もうちょっと大きい規模の音楽事務所だったら、そういったことはせずに中止するか粛々と進むんでしょうけど、うちみたいな規模でも毎回大きな問題もなくライブやコンサートが出来ているのは、本当にお客様のあたたかさがあってこそですね。

Mina うちはコンサートもイベンターとか通さず全部自分たちでやっているので、至らないこともあるかと思うのですが、ホールやライブハウスのスタッフさんとか、物販スタッフを手伝ってもらう私の友人とかにも「本当にファンの方はみんなめちゃくちゃいい人で、お客様に助けられてる!」って言っていただいてます。物販で釣り銭が切れてしまった時も、お客様同士で崩してくれたり(笑)。こちらの不手際を本当に助けていただいていて。そこに甘えちゃいけないんですけどね。

浜渦 帯広のライブでも、気づいたら一緒に設営を手伝ってくれた人がいたりしたよね。

Mina そうそう。人手不足だった時に、ファンの方が手伝ってくれたこともありました。あと帯広のコンサートの後に、会場や駐車場の整理をされている方から言われてすごく嬉しかった言葉があるんです。「コンサートが終わった後、駐車場で車が邪魔で動かせないとか渋滞とかあって、いつもなら出る文句も誰からも出なくて。みんながコンサートの後でやさしい気持ちになったんでしょうね」って言ってくださって。それはたぶん、浜渦が生み出す音楽がそうしてくれているのかなと思います。

浜渦 なんかこう、直接の会話が無くても、お客さんと目が合ってちょっと話したりすると、なんか分かるんですよね。僕と近いなっていうか(笑)。静かなお客さんが多いんです。拍手もわりと静かで(笑)。

Mina けっこう、1人でいらっしゃる方が多いですよね。

浜渦 そうそう。なんか、お客さんの拍手もまばらだから「あんまり受けてないのかな?」と思ったら、ライブ終わったらほとんどの人がサイン会に並んでくれて、泣きながら「よかったです!」って言ってくれて。それだったらもうちょっと大きな拍手が欲しいな、とか少しだけ思ったりするんですけど(笑)。でも、僕も同じ人種なので、すごく分かります。ほんっと、感謝してます。なんかうまく伝えられないですけどね、いっつも。

Mina まあ、でも、その感謝をどう表すかというのが、「誠実に音楽で応える」ということなんでしょうね。

浜渦 そうだね。

─ ありがとうございます。では最後にひとこと、ファンの皆さんへのメッセージをよろしくお願いいたします。

浜渦 それ、いっつも苦手なんです(笑)。えーと……、四の五の言わんほうがいいかな。これからも精一杯、手を抜かずに曲を作っていきますので聴いてください。よろしくお願いします。

Mina 是非一度、イメルアの音楽を生で体感して欲しいです!長いインタビューを最後まで読んでくださった方とどこかでお会いできる日を楽しみにしています(笑)。



東京 追加公演「イメルア新春雷鳴大劇場」
大好評につき、東京追加公演が決定!!ツアー最後の公演は最強のフルメンバーでの演奏!!




2018年1月8日(月・祝) / マウントレーニアホール渋谷
16:00開場 / 17:00開演
全席指定
A席5,300円 / B席4,300円 学生各1,500円引き ドリンク代別
出演:浜渦正志(キーボード・作曲)、Mina(ヴォーカル・トンコリ)、伊藤彩(ヴァイオリン)、結城貴弘(チェロ)、佐々木"コジロー"貴之(ギター)、スギモトトモユキ(VJ)、TeNiOE Girls(ダンス)

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