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ステージに居るときが最高の時間 響談 -植松伸夫×坂本英城-

その3:植松さんが、今一番気になる作曲家。


永芳 CDといえば、植松さんのバンド「EARTHBOUND PAPAS」の
2枚目のアルバムリリース予定はありますか。

植松 僕が4月半ばくらいまで色々あって動けないので、
4月半ばくらいから準備を始めようと思っています。
またここにみんなが集って・・・この部屋で録音しているんですよ。

坂本 作曲家からすると、こういう部屋はあこがれですね!

永芳 この部屋は、卓球もできるんですよね。

植松 そうなんです、ここは「ピンポンピットスタジオ」って言って。
部屋の真ん中に卓球台を持って来て、卓球もできるんですよ。

坂本 わー、いいですねぇ。

植松 いつかこの部屋から、卓球のチャンピオンが出るといいなと。


(一同笑)

坂本 そんなに本格的なんですか!

植松 いやいや、ピンポンですよ、ただの。
おまえスマッシュするなよ〜、みたいなね(笑)。

永芳 スタジオ一面にある本棚がすごいですよね。
楽器もたくさん置かれていて・・・
ここを見るだけで、植松さんは音楽が大好きなんだなっ
ていうのが伝わってきます。

植松 基本的に音楽ファンなんですよ、僕。

坂本 いやあ、嬉しいですよ。
植松さんのスタジオにこうしてお邪魔して、お話できる日が来るとは。

永芳 そういえば、お二人は今日初めてお会いされたんですよね。
お互いの印象はどのようなものだったんですか。

植松 僕は、PRESS STARTというゲーム音楽のオーケストラコンサートを
何人かの企画者と一緒に毎年1回やらせてもらってるんですけど、
そこで何年か前に、坂本さんの『無限回廊』の楽曲を選曲で推したんです。
演奏は実現しなかったんですけど、
僕は、『無限回廊』のような弦楽四重奏だけで演奏される曲があったら、
絶対コンサートにもっと幅が広がるといまだに思ってるんですよ。
今度、PRESS STARTの会議があるんですけど、
そこでもまた推してこようかなと思っています。

永芳 おお、PRESS STARTは今年もやる予定はあるんですか。

植松 予定はありますね、まだ決まってはいないんですけど。
PRESS STARTは年1回だから、みんな盛大にやりたいわけですよ。
でも物事って、全部が全部ドカーン!ドカーン!っていうものだと、
メリハリがなくなるじゃないですか。
まわりが盛大にドカーンってしている間に、フッって弦楽四重が入ると、
僕はより幅が広がると思うんですけどね。

坂本 ありがたいです。

永芳 以前、植松さんのインタビュー記事で拝見したのですが、
今一番気になっているゲーム音楽作曲家の方が坂本さんだそうですね。

植松 うん、言ったことがあります。

坂本 わーー、うれしいですね。
崎元(仁)さんと間違えてたわけじゃないですよね?(笑)。

植松 あー、似てますね(笑)。 サカモトとサキモトでね。

斉藤 以前、一度間違えられてたんですよね。

坂本 そうなんですよ、僕がロシアでコンサートを開催した時の海外の記事で、
思いっきり崎元さんが笑っていて・・・


(一同笑)


すぐ崎元さんからメールがあって、僕やってないですよ?って言われて、
ですよね、って(笑)。 すぐ修正を入れていただきました。
本当によく間違われるんですよね。
でも、いやー、光栄です。

斉藤 植松さんは、どこで坂本さんの曲を知ったんですか。

植松 僕は『無限回廊』ですね。
ゲームで曲を聴いて、へえ、こういう音楽をやってる人いるんだなぁって思って。
クラシック出身の人なんだろうなあって思って、Webだとかで色々調べてたら、
独学という情報を得て。すごい人がいるんだなあって思いましたよ。

坂本 いえいえ、そんな・・・!
いろんなものが混ざってる感じですね、あの作品は。
まあ弦楽四重奏なので、クラシカルには聞こえるんですけど。

植松 和音の響きも、クラシックではなく、いわゆる近代以降のものになっていて。
てっきり、クラシックの世界から来た人かと思ってましたよ。

坂本 『無限回廊』のゲームコンセプトは、
エッシャーのだまし絵みたいな世界なんです。
そして、エッシャーがバッハが好きだったというところから、
バッハ系で行こうと決まったんです。
さらに、フランスのラヴェルやドビュッシーのようなニュアンスを
足していった感じで作曲しましたね。

『無限回廊』は、僕の作家人生で、最初に自分の好きなようにできた作品です。
だいたいそれまでは、作って出すと、いやこうじゃないんだと言われたり、
最初からカッチリコンセプトが決まっていたりすることが多かったんですが、
『無限回廊』は、「坂本さん、好きにやっていいよ」と、
ソニー・コンピュータエンタテインメントの
鈴木プロデューサーという方が言ってくださって。
なのでリテイクも全くなかったという・・・そういう作品でしたね。

対極にあるのが『勇者のくせになまいきだ:3D』ですね。
大橋さんというディレクターがいるんですが、
彼と相談しつつ多い曲で10回くらい直しましたね (苦笑) 。
結果的にはいいものになったんですけどね。

ディレクターとの連携は、ゲーム音楽の場合は非常に大事だと思います。
いやあ、でも植松さんにそんなこと言ってもらえるなんて、夢のようです。

写真

植松 いえいえ。

坂本 僕は、中3の頃から植松さんのことを知ってましたから。
そして、こういう人になりたいと憧れて、この世界に入って活動を始めて。
それが今こうして、いちばん気になる人として
名前を言ってもらえるというのは・・・
本当に嬉しいですね。

斉藤 植松さんは、『無限回廊』の曲を生で聴いてみたいと思いますか。

植松 ぜひ聴いてみたいですね、弦楽四重奏で。
ああいうのは日本でもうやっているんですか?

坂本 今のところはないですね。
シンガポールでは1回やったんですが、音大生が演奏するようなもので、
プロ奏者の方での演奏会はまだ実現していないんです。
そういえば最近、『無限回廊』の譜面が欲しいという依頼が
Facebookなどで多く来ていたりしますね。
生徒に教えたいんですという人もいて。

斉藤 おお、いいですね。

坂本 弦楽器を始めた人にとっては、結構いい練習の題材になるらしくて。
そんなことは全然意図して作ってなかったんですけどね。

斉藤 新しいエチュード(練習曲)ですね。

坂本 まあ、難易度は相当高いんですけどね(笑)。


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