その2:開発に提案し、CD制作もこなす「何でも屋」
斉藤 | 長年、単なるメーカー名ではなく、 「ZUNTATA」という独自の名前を掲げていますよね。 |
内田 | 実は近年、メンバーがかなり変わってきたという事もあり、 名前を変えようと思ったことはあったんです。 ユーザーさんに与える印象も変わるだろうし、 「これから自分たちも違うことをやっていくぞ」 という意気込みもある。 そんな時に、背負ってきたものが有り難くもあり、 有り難くなくない部分もあるんです。 そのイメージを一新したいということで、 今の4代目のロゴに変えました。 その前に名前を変えようということで、 メンバーから案を募ったんですよ。 数百の案から30くらいにまで絞って、 最終的に商標に申請したんですが、全部キャンセルされて(笑) |
小塩 | 薬品の名前とかぶってるとかで、 結局「ZUNTATAなんとかかんとか」だったらいいと言われたけど、 でもそれって・・・ |
内田 | 変える意味がない(笑) でも最初(その1冒頭)に石川が述べたように、 これまで培ってきた我々のスタンスが、今後変わるわけでもない。 ここはひとつ腹をくくって ZUNTATAでこれからも行こうじゃないかということで、 同じ名前で今日まで来てるんです。 |
石川 | 多分、ZUNTATAという名前を作った小倉さんは、 こんなに長く使うと思っていなかったと思うんですよ。 でも何となく長く使ってきて、 色々な意味を持つようになってきた。 一時期それが重たく感じたことはあったんですね。 でも別に無理して変えなくても やってることは変わらないわけだし・・・ というところで開き直った。 |
小塩 | とりあえず5代目のロゴはまだ先になりそうですね。 |
斉藤 | なるほど。 お話をうかがっていると、ZUNTATAの考え方は硬派ですよね。 |
小塩 | 我が道を行くということが硬派ということなら そうかも知れないですね。 でも、別に私は全然硬派じゃないですよ。 |
土屋 | それは分かってる。 (一同笑) |
内田 | 我が道ということで言えば、 曲制作で「普通っぽいからリテイク」ということはあります。 悪くないけど、タイトーのゲーム音楽として出すには何か物足りないよね、 もうちょっと変えられない? というように踏み込むことはありますね。 |
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斉藤 | なるほど。 曲を決めるとき「これで行こう!」と言うのはどなたですか? |
石川 | サウンドディレクターです。 大抵は私と土屋と小塩のうちの誰かが ゲームごとのサウンドディレクターとして立ちます。 |
小塩 | サウンドディレクターと、ゲームのプランナーや ディレクターたちとの中で色々とイメージを固めていきます。 逆に我々から提案することもあって、 「スペースインベーダー エクストリーム」などは 「音に同期してショットするシステムを入れてみては?」 という提案を入れました。 「ダライアスバースト アナザークロニクル」もサウンドから結構提案をしたよね? |
土屋 | うん。だってあれ、音作ってからゲーム作ってるからね(笑) 「この音に合ったゲームにしてください」という、 平たく言うとそういう感じで作ってもらっています(笑) |
小塩 | ディレクターから「こういう曲を作って」と トップダウン的に降りてくるだけではない作り方は、 我々ならではなのかな。 |
土屋 | そうだと思う。おかしい。 (一同笑) いや、どの会社でもサウンドが企画に食い込むし、 音のイメージについて最初から話し合っていくとは思います。 でもタイトーでは、ディレクターがサウンドに、 ある種の恐怖を覚えていますね(笑) 「この人たち何かやってきそうだな」っていう。 普通だったらNGになりそうな部分も、 面白いなという形でとらえてくれる。 そして、面倒臭いことでも「やろうか」と言ってくれる プログラマーさんとかディレクターさんがすごく多い。 通常、サウンドはゲーム制作で最も後回しになります。 でも、ここではサウンド主導で ゲームを面白くするアイデアを出しても構わないという土壌がある。 これはタイトーならではだと思いますね。 |
斉藤 | そういった開発とサウンドの関係は 昔からあるんですか? |
石川 | そうですね。関係は結構密ですね。 特に昔は、横浜の中央研究所に開発も サウンドも1箇所にまとまっていたので、まあ凄かったですね。 半分喧嘩みたいのもよくありましたし(笑) |
斉藤 | 開発がサウンドを信頼してくれているというは大きいですよね。 |
土屋 | すごく大きな特色になりますよね。 こちらがイメージしているゲームの音を チャレンジさせてくれるというのは、 本当に他ではないと思います。 |
内田 | これまでの王道路線からすると 「冒険し過ぎじゃない?」というような音でも、 普通にゲームセンターに組み込まれて出て行く。 クレーンゲームが歌っていたり。 (一同笑) |
斉藤 | ところで、ZUNTATAがメンバーを採用する時に 見るポイントはありますか? |
内田 | 滅多に募集はしないですけど、応募すると相当数来るんです。 まずはデモの音源を聴かせてもらって、その段階で相当絞られる。 最終的には面接をして、 「どういうスタンスで音楽を作ってるか」、 「これからどう活動していきたいか」、 「何を期待してタイトーを希望されているのか」 などの話を聞いて決めるんですよね。 この人なら一緒にやっていけるだろう、 というところで決まったのが土屋君です。 |
石川 | 個性的な音楽を作れるというのも選考基準のひとつですが、 幅広く作れないといけない、というのもありますね。 うちはゲーム・アミューズメント全般を手掛けているので、 アーケードも家庭用も携帯アプリの音はもちろん、 時にはイベントもやったり、タイトーステーションの店舗がらみの、 PV(プロモーションビデオ)の音だの、テーマソングとかも作ったりするし・・・。 |
小塩 | タイトーステーションのテーマソング作りました(笑) |
石川 | とにかく色んなオーダーがあるわけですよ。 だからシューティングの曲だけ作りたい、 カッコイイ曲だけ作りたい、というのはダメですね。 そういう仕事は全体の1/100くらいしかないので。 |
小塩 | もっと言うと、曲だけ作りたいという人はダメですよね。 |
石川 | ええ。だから幅広くどんなジャンルでも作れて、 効果音を作ったり、声優を呼んで収録ディレクションをしたり、 サウンド仕様書を書いたり、細かいリストを作ったり。 やることが多岐に渡るだけに、 オールマイティさが要求されます。 プラスで個性。 色々できることが重要で、個性があれば尚良しですね。 |
内田 | そうですね。 送っていただくデモ音源に、RPG風の曲が何十曲も入っていたり、 シューティング風の曲だけ詰まっているようなことが多い。 多分やりたいジャンルや得意ジャンルだからでしょうけど、 それよりは色んなバリエーションの企画に 対応できるような音楽を入れて頂いたほうが、 こちらも選び易いですね。 土屋君はたくさん作ってきたしね。 |
土屋 | まあ何でも作りますね。何でも屋です(笑) |
石川 | サウンドは何でも屋だよね。 |
内田 | ディレクション、CD制作、飛び込み営業的なことなど、 やることは様々なんですよね。 だから音楽だけ作っていたい、 それだけにしかクリエイティブ性を感じられない、 という人はうちには向かないと思いますね。 |
石川 | CDを作るというと、すごくクリエイティブなことを 想像されるんじゃないでしょうか。 でも、うちでCDを出す時には、社内的に 「このCDを出していいですか」という書類を書いて出したり、 CDの利益計算したり、 何月何日に印刷物を入稿してというスケジュールを立てたり。 これらを全部自分たちがやるんです。 |
小塩 | 多分、他社さんだとCDを出版する部署があるんでしょうけど、 僕らはそれがないので、自分たちで出版、プロデュースしないといけない。 CD制作において、僕の感覚ではクリエイティブな仕事は20%くらいで、 後の80%くらいはカッコ良く言うとプロデュース的な仕事、 カッコ悪く言うと地道な雑用です(笑) |
石川 | 泥くさーい、ね。 |
内田 | それが嫌でやってるわけじゃないんだけどね。 |
小塩 | もちろん嫌じゃないですよ。 でも、おそらく皆さんが想像されていることと、 全然違うことをやってる。 それはCDを出すために必要なことです。 すごく勉強になります。 |
内田 | もっと頑張って。 (一同笑) |
土屋 | 今この時代、分業制が進んでいる中で、逆行してるなと思いますね。 プロデュースワークから実務、制作、全てをやるというのは。 今、逆にそれを経験しようと思っても、 なかなかできないんじゃないですかね。面白いですよ。 |
高部 | 他社さんではあまりなさそうですね。特にコンポーザー自らが。 |
内田 | ないでしょうね。 それが人数が多かった頃からそうだったんだよね。 うちのサウンドチームは全盛期には30人くらいいて、 そのうち半数が作曲家でした。 96年に自社レーベル「ZUNTATA RECORDS」を立ち上げて、 今まで80枚以上CDを出していますが、 その頃から全部自分たちで見込みを立ててやってきている。 だからこそ個性が際立ったCDを出してこられた、というのはあるんです。 |
石川 | いわば、タイトーの中に「ZUNTATA」っていう会社が ひとつあるような状態に近いですね。 だからCDや配信事業を、僕ら作り手が本気でやっている。 |
小塩 | いわゆるゲームメーカーのサウンドチームの中で ZUNTATAのホームページが一番更新頻度が多いんじゃないですか。 あれも石川が更新しています。 |
石川 | 僕らは作って売るところまで全部責任を持ってやっています。 CDの帯の言葉とか、CDショップに回る 新譜情報に載るPR文も自分らで考えています。 |
小塩 | 載せる雑誌ごとに10個くらい宣伝文句を考えなきゃいけなくて、 そんなにネタないよ、みたいな(笑) しょっちゅう文章書いていますね。 |
高部 | ZUNTATAの場合はCD制作で作り手と売り手が直結してるんですね。 いや、直結もなにもご本人たちが・・・。 (一同笑) |
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石川 | 他に誰も作ってくれないですからね(笑) |
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