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ゲームサウンドクリエイターのあつまり「ゲ音団」との対談

その9:ゲーム音楽は体験、そして聞こえなくなるもの


菊田 ゲーム音楽っていうのは、
それ自体が体験じゃないのかな。

ゲームで体験した感情や
体験から起こる心の動きみたいなのを、
増幅させる形でサポートしている部分があると思います。

架空に体験させているといいますか。

あと、ゲーム音楽ってループしますよね。

ちょっとコントローラーを置いて、
お手洗いに行っている間も
ずっと音楽がループして聞こえ続けていて。

すごく印象に残りますよね。

斉藤 回数でいったらものすごい数を聞きますよね。

菊田 インタビューでよく答えるんだけど、
普通にCDを買ってきても、
3回ぐらい聴いて棚にいれておしまい。

その後は、たまに思い出したように聴く。
たいていはそうじゃないかな。

斉藤 はい。

菊田 でも、スーファミのソフトを買って、
ガンッと入れると何十時間も平気で聴いていたりして。


(一同、ドッと笑う)


そういう風に聴かれる音楽ってないよね。

強制的ですもんね(笑)

斉藤 そうですね(笑)

菊田 聴かれ方が特殊だから、
創り手としてもその心構えで創っていたというのがあります。

怖いですよ。
だって自分が今から何十時間もこの曲を聴けって言われたら、
普通だったら嫌な感じがするじゃないですか。
どう考えたって飽きてしまう。

でも、自分たちが作る音楽っていうのは
そういう音楽だったりするわけです。
“これから30時間聴いても飽きない音楽を作ってください”
と言われているようなものですね。

そういう意味で突き詰めて作っていました。
その時に僕が理想としたのは、

“聞こえなくなる”っていうのが一番いいなって思ったんです。


ゲ音団img

TECHNOuchi 空気。

菊田 そう。

最初は、聞こえてるんだけど、
だんだん聞こえなくなって気分だけ残るっていう。

なるほど。

菊田 ちょっとワクワクするとか、
ちょっと元気になる、みたいなのだけが残って
プレイしているうちはゲーム音楽自体が
聞こえなくなっているといいますか。

それがベストだと思いました。

TECHNOuchi わかります。

聴くというよりは、
自分の感情をコントロールしてくれる音楽ですね。

音楽として、という部分と、
ゲームを引き立てる、という部分のさじ加減は
非常に難しいですよね。


(一同、うなずく)

斉藤 なるほど。

サウンドクリエイターさんが
そのように制作してくださったので、
聴くと、ゲームに触れたときの感情を
思い出すのかもしれないですね。