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ゲームサウンドクリエイターのあつまり「ゲ音団」との対談

その2:サウンドクリエイターを繋いだ1人のファン


菊田 僕らがゲーム音楽を創って、
もう20年ぐらいになるんですけど、
みんなが会社に属していることや、
フリーでプロジェクトに関わっていたりするので
横に繋がっていくっていう
方向性が見えなかったところがあります。

名前や音楽もよく知っているのに、
実際には会ったことも
メールでやり取りしたこともないような業界だったんです。

斉藤 はい。

菊田 そういう状況がずっと長かったんですが、
1人の方がその状況を変えてくれました。

TECHNOuchi それは、ボクたちが集まるきっかけになった
アレンジCDを企画したケイブの方なんです。

まだ年齢は若いんですが、
その人がゲーム音楽の大ファンだったんですね。

菊田 そうなんです。

その人が
「よし、ボクの好きなゲーム音楽の作曲家を集めて
アレンジアルバムを作ろう!」って思ったときに、
僕たちの間にあった壁がなくなったんです。

斉藤 なるほど。

菊田 彼はコネがあるからとか、
時代の流れがあるからそうしたわけじゃなくて、
なんの繋がりもないけど、
とにかくメールを送って
アレンジアルバムに参加出来るか聞いてみようと
チャレンジしてくれたんですよ。

斉藤 すごい。

菊田 えぇ。

突然、彼からメールがきたんです。

“「怒首領蜂 大往生」という
シューティングゲームがあるのですが、
そのアレンジ版の1曲を
アレンジしてもらえませんか?”って。


僕からしたら、「誰、君?」という話でして。


(一同ドッと笑う)


誰だかわからないけど、
面白そうだったので参加しました。
新しい人がやってきて、
何か物事が動いていく感じがしたんです。

実際にアレンジ版を作ったら
今度は“打ち上げをやります”という話になって
ここで、参加したサウンドクリエイターさんたちと
初めてお会いました。

もちろん僕が会ったことのない方もいました。
僕らの業界ではそういう壁みたいのを壊せなかったんですけど、
新しい人たちがやってきて、やっと壊れたんです。
これは本当に面白い動きが始まったんだと感じましたね。

多分、その場にいたTECHNOuchiくんも
同じことを感じたと思います。

TECHNOuchi その通りです。

菊田 この動きをこの1回で無くしてしまうのはもったいないと
2人で飲みながら話をしたんです。
ゲーム音楽のサウンドクリエイター同士の繋がりを元にした、
何か新しいことを始められないかって。

そこでの結論としては、
何ができるかわからないけど、
まず、飲み会を続けていこうって決めました。

斉藤 おぉ。

飲み会とは、ちょっと変化球で面白いですね。

菊田 飲み会の連絡のためにホームページも作ろうと
TECHNOuchiくんに持ちかけて。

そうしたら、もうできてますって言ったんです。


(一同笑い)

TECHNOuchi えぇ。
ひとことで言ってしまえば、
この流れがゲ音団のルーツになります。

なにがおもしろいかっていうと、
アレンジCDをプロデュースした方は、
サウンドクリエイターじゃないですよね?

斉藤 はい。

TECHNOuchi サウンドクリエイター同士では
今まで何も変わらなかったことが、
サウンドクリエイター以外の人が
企画を持ち込んだことによって、
ボクたちが予想しなかった素晴らしいことが起きたんです。

菊田 その動きのなかで一番いいのが、
ビジネスで動きましょうっていうことよりも

“「ボクはゲーム音楽が好きなんです。
みなさんの音楽を聴いています。」”

っていう人の気持ちが元になってることなんです。

だからこそ、僕たちの付き合いが
今も続いていると感じています。

気持ちがね、すごくいいな。

TECHNOuchi えぇ。

私は、後からゲ音団に参加したんですが、
あるメーカーの方から
「サウンドクリエイターが集まる飲み会があるから来ない?」
って誘われたんです。

面白そうだなって、軽い気持ちで行ったら、
大勢いらっしゃってビックリしました。

菊田 こんなにゲーム音楽のサウンドクリエイターが
集まる機会はなかなかないですからね。

人数もそうですけど、
集まり方の勢いや会話を聞いていると、
みんな本当に求めてたんだなぁと思いました。

先ほども仰っていたように、
意外かと思われるかもしれませんが、
なかなか同業者の方にお会いする機会がなかったんです。

だからついつい同じ仕事をしている方たちに、
どんな機材を使ってるんだろう?とか
話したいことがたくさんあって。


(一同うなずく)

斉藤 やっぱり、そうなりますよね(笑)

TECHNOuchi どちらかというとサウンドクリエイターは
黙々と作品を作る方が多いです。
忙しいというのも、もちろんありますし。

菊田 みんなシャイなんだよね(笑)

TECHNOuchi そうですね。

で、実際に繋がってみると、
まるで昔からの知り合いのように自然なんです。
言うならば今まで別々の場で戦ってきた戦友のような。
同窓ではないのに同窓会のようなノリです(笑)

だけど、普段はみんなライバルなんですよね。
よき仲間であり、よきライバル。
そんな関係に光が見えた気がしました。