特集コンテンツ

ボストンでゲーム音楽を演奏するVideo Game Orchestraとの対談

その5:音を楽しむから音楽じゃないですか

斉藤 日本でのエキストラはどのように探していくんですか?
個人的に一奏者として興味があります(笑)

仲間 ちょっと偉そうかもしれませんが、僕が日本に行って直接選びます。
オーディションっていうのかな。

ボクが一番イヤなのって、
ボクらのやってる音楽をどうでもいいって思ってる人が
演奏するのが一番イヤなんですよ。

斉藤 それは絶対そうですね。

仲間 いくら有名でどんだけ上手いプロであろうが、
そんなことをしてしまったら、
レコーディングしたCDと同じものになってしまいます。

多少実力が劣っても、
本当に音楽に情熱があって、
ゲームが大好きで、
楽しん演奏できる人たちをボクは選びます。

斉藤 聴衆もそれがわかるんですよね。

日本でもプロのオーケストラが演奏するコンサートを
何回か開催していますが、
たとえ奏者の人たちにプロとしての技術があっても、
ゲーム音楽の楽しさとしては不完全さが残るというか。

もちろん、なかにはゲームが好きな奏者もいるとは思うんですが、
ただプロを雇って演奏すれば大丈夫、という
単純な話ではないように感じます。

貝塚 僕が思うのは、それぞれの楽団にスタイルがあって、
それぞれの評価の仕方があると思います。

VGOは何が恵まれたかっていうと、
お客さんがコンサートの聴きどころで叫んでくれるんです。
クラシックだと座っておとなしくって感じですけど、
彼らもボクたちもそれは求めていません。

聴きどころだからこそ、
叫んでほしいし、喜びを表現してほしい。
VGOを聴きに来てくれた人はそれがわかってますね。

斉藤 それは嬉しいことですね。

日本にはすでに10団体以上の
アマチュアゲーム音楽演奏楽団がありますが、
それぞれに特徴があって、
編成にしても、演出にしてもぜんぜん違うんです。

で、それがすごい面白いなって思って。
やっぱり、ただ上手いヘタだけで比べたらつまらないですよね。

仲間 そうですね。
やっぱり音楽って“音を楽しむ”って書いて音楽じゃないですか。
そう考えたら、楽しまないで演奏してたら
もう音楽じゃないんですよ。

プロの人には仕事だからしょうがないって思っちゃう日もあります。
ボクもギターの演奏を頼まれて
そういう気持ちになってしまうこともあるけど、
そういう人はVGOに入れたくありません。

どんなに上手くても、
この人はこの音楽にこの先、興味が持てるかとか、
この人は利益目的だけで入ってるだろうとか、
性格が合わないかもしれないとか、
いろいろな要素を考えてVGOを創ります。

斉藤 えぇ。

仲間 それはグループを守るためでもあるし、
ボクらのサウンドを守るためでもあります。

お互いを理解してくれて、
仲のいい人たちと一緒に家族みたいにやっていくと
そういう音が鳴るんですよ。

確かに演奏面での細かい間違いなどは誰にでもあります。

でも、
ボクらのコンサートに“来ている人”たちって
そういうのが気にならない。
それぐらいのエナジーが
ボクらのコンサートから出てると思うんですよ。

斉藤 それは素晴らしいことだと思います。

正直言うと、音楽的な面で気になる部分もありますが、
さっきの仲のよさのお話じゃないですけど
VGOとお客さんの関係性が伝わってきて、
会場全体の空気感といいますか、すごくいいんです。

仲間 プレイヤーの演奏能力だけに頼っても、
いきなりいい演奏会ができるわけじゃないし、
徐々にグループとして伸びていくところは
メンバー間の関係もいいのかもしれないですね。

実はボクも、そんなにうまくなくても
成長株は入れたりもしているんです。

斉藤 ムードメーカーみたいな人も必要ですよね。

仲間 そうですね。
演奏技術はあとから上手くなっていっても
いいのかもしれないですね。

斉藤 日本のほとんどの楽団の団員は、
週末にだけ練習をするスタイルですから、
技術以外のメンバー間の関係というのは、
特に大事になってくる要素なのかもしれません。

なにか、ひとつヒントを得た気がします。

仲間 プロの演奏の話に戻りますが、
やるならドイツでのコンサートのように
ケタ外れのクオリティを出すしかないですね。

斉藤 それは、「Symphonic Fantasies(※7)」のことですか?
(※7)Symphonic Fantasies … 2009年9月11日と12日にドイツで開催された、
スクウェアエニックスのゲームタイトルのみのゲーム音楽コンサート。
演奏は、ケルンWDR交響楽団。