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『ゼルダの伝説』サウンドインタビュー - 横田真人氏が語る、『ゼルダ』コンサートと『ムジュラの仮面3D』の聴きどころ-


ライター:hide (永芳 英敬) インタビュアー:hide、斉藤健二(2083)

2月7日(土)に開催される、『ゼルダの伝説シンフォニー:ムジュラの仮面 3D発売記念コンサート』。今回は『ゼルダの伝説』シリーズや、『スーパーマリオ』シリーズで音楽・オーケストレーションを担当する、任天堂の横田真人氏に、コンサートの聴きどころをお伺いしました。そして、2月14日(土)に発売となるニンテンドー3DS版『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』についても、サウンド面の新要素や、ゲームの魅力をお話しいただきました。
ご自身も大のゲーム好きだという横田氏。さて、どんなお話が飛び出すのでしょうか。
ミンナニハ ナイショ…ジャナイヨ!

横田 真人(よこた・まひと)さんのプロフィール

任天堂 情報開発本部 東京制作部所属。『スーパーマリオギャラクシー』をはじめとする3D『スーパーマリオ』シリーズの音楽を担当。近年の『ゼルダの伝説』シリーズにも携わっており、『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』でも音楽を担当している。
代表作:『スーパーマリオギャラクシー』、『スーパーマリオギャラクシー2』、『スーパーマリオ3Dランド』、『スーパーマリオ3Dワールド』、『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』、『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』など





―― 本日はよろしくお願いいたします。

横田 こちらこそよろしくお願いします。サウンドにスポットをあてていただけるインタビューは珍しいですね。海外のメディアからのサウンドインタビューはたまにあるのですが、日本ではなかなかそういう機会がなくて。ですので今日は、わりとマニアックな話ができるかなと(笑)、私も楽しみにしていました。

―― (笑)。ではまず簡単に、横田さんのプロフィールをお聞かせいただいてよろしいですか。

横田 はい。まず、2月14日(土)に発売となる『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』(以下、『ムジュラの仮面 3D』)については、ニンテンドウ 64(以下、64)版の原曲を、3DSに移植という形で、音楽まわりの全データを再制作しています。原曲は、弊社の近藤浩治と峰岸透の2名が担当しております。あと『ゼルダ』シリーズでいうと、Wiiとニンテンドー ゲームキューブで発売された『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』の予告動画でオーケストラの音楽を使用しているんですけど、それを私が担当しました。その後、3DSの『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』(以下、『時のオカリナ 3D』)と、Wiiの『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』の音楽を担当しております。最近は、3D『マリオ』シリーズと、3D『ゼルダ』シリーズの音楽を担当しています。

―― ありがとうございます。さて、2月7日(土)に『ゼルダの伝説シンフォニー:ムジュラの仮面 3D発売記念コンサート』が開催されますが、今回のコンサートに横田さんが携わっていらっしゃるとお聞きしまして。コンサートの聴きどころをお伺いできればと思っています。今回どのような形で携わられたのですか?

※なお、本コンサートのチケットは既に完売となっております。
ニコニコ生放送にて有料配信が予定されております。


横田 企画の監修と選曲、あと、指揮者と演奏者の人選について関わっています。また、今回のコンサートでは、2011年に開催された『ゼルダの伝説25周年 シンフォニーオーケストラ コンサート』で演奏した曲から、いくつか再演されます。もちろん今回のコンサートのための新曲も用意されていますので、それらを織り交ぜて演奏する形になります。

―― そういえば横田さんは、『ゼルダ』25周年の際の『社長が訊く』で、「『ゼルダ』のコンサートをやりたいとずっと言い続けていた」とおっしゃっていましたね。

横田 そうですね、言っていました(笑)。

―― 今回のコンサートはどのような経緯で実現したのでしょうか?今回も横田さんの熱意で実現したのでしょうか。

横田 いえ、実は今回、任天堂が主催ではないんです。今回の主催は、このコンサートを企画されている、Jason Michael Paul Productions, Inc.(ジェイソン・マイケル・ポール・プロダクションズ。略してJMP)というアメリカのコンサートプロモーターさんなんですけど、そちらの代表の方が、数年前から、海外で『ゼルダ』のオーケストラコンサートツアーを開催されていたんです。

―― 「Symphony of the Goddesses」ですね。

横田 そうです。話が早くて助かります(笑)。

―― 日本の『ゼルダ』ファンとしては、とてもうらやましく思っておりました。

横田 あのコンサートツアーは、アメリカとヨーロッパで開催されていたんですが、日本公演がなかったんですよね。で、今回、JMPさんから「ぜひ日本でやりたい」とおっしゃっていただいて。今回なぜコンサートが実現したかといえば、主催であるJMPさんや日本のプロモーターのみなさんの熱意があったからというお話になります。ですから今回、私は動き始めていた企画に乗っからせていただいた、という関わり方になります。

―― 先ほどおっしゃったように、選曲などでご協力された、と。

横田 そうですね。いざコンサートをやるとなったら、クオリティであるとか、せっかくだからこういう曲をやりたい、ということはどうしても多少口を出したくなってしまうので(笑)。もちろん私たちは主催ではないので、無理のない範囲で……ということで、色々お話させていただいています。あと、『ゼルダ』25周年コンサートの時に、けっこうな分量の楽譜を作ったんですよね。あの1回限りのコンサートでしか使わないというのは、もったいないので、また演奏してもらいたいなと思っていたんです。今回そういう話をちょうどいただけたので、であればぜひお願いしたいな、と。『ゼルダ』25周年コンサートで好評だった曲もありますし、あと、私たちで大事にしていきたい曲というのもあって。

―― それはどんな曲でしょうか?

横田 今回のコンサートの聴きどころのひとつなんですが。「組曲オカリナメロディ」という、『時のオカリナ』と『ムジュラの仮面』に登場するオカリナの楽曲を演奏するプログラムがありまして。

エポナの歌、ゼルダの子守唄、いやしの歌など、『時のオカリナ』と『ムジュラの仮面』のオカリナの曲を全曲網羅して。さらに、オーケストラのさまざまな楽器の紹介を兼ねています。みなさんがゲーム中一生懸命演奏したオカリナの曲と、楽器紹介の両方を楽しめるといいなと思って、前回のコンサートで作ったんですよ。前回のコンサートに来られなかった方も多くいらっしゃるかと思いますので、今回これを再演させていただくことになりました。ぜひ多くの皆さんに楽しんでいただきたいと思っています。

あと、この「組曲オカリナメロディ」は、普通のオーケストラの音楽とちょっと違う特殊な要素がありまして。この曲は、ナレーターが必要なんですね。ナレーターが曲名と楽器名を紹介して、オーケストラで演奏されて、またナレーターが次の曲名を紹介して……という流れになっているので、ナレーターさんも楽器の一部として設計されています。ですので、ナレーター用の楽譜がありまして。





ここに私の手書きで恥ずかしいのですが、台本が書いてあるんです。で、ページをめくると……、楽譜の流れにあわせて、「このタイミングでこのナレーションをしゃべってください」というような指示が全部入ってるんですね。

―― 楽譜の中に書き込まれていると。

横田 そうなんです。いわゆるオーケストラの楽譜は、パート譜といって、フルート、トランペット、ヴァイオリンなど楽器別の専用楽譜が各演奏者さん1人1人の前に置いてありますけれども、これは、ナレーターさん専用のパート譜になるわけですね。非常にマニアックな話ですが(笑)。

―― いえいえ、こういうお話をお聞きしたかったんです(笑)。そうですよね、ナレーターの方が曲名や楽器名を紹介するわけですからね。

横田 そうなんです。いわゆるオーケストラで言うソリストという立場で。ナレーターにとっての音符は楽器紹介のコトバ、ということになりますね(笑)。ですから、ナレーターはかなり重要な役割なんです。コンサートは『ムジュラの仮面 3D』発売日の1週間前になりますので、ぜひ「組曲オカリナメロディ」で、『ムジュラの仮面』を遊んだことのある方はオカリナの曲を思い出していただきつつ、楽器を一緒に覚えていただけたら嬉しいです。

―― ファンの皆さんにはたまらないと思いますよ。前回のコンサートで演奏されたのを聴かせていただきましたけど、ゲームでも、はじめ単音でオカリナを吹いた後に曲が流れるじゃないですか。あれが生のオーケストラに本当にぴったりで……泣いちゃいました。

横田 ありがとうございます。私もそういうゲームを遊んでくれた人には分かっていただけそうな細かい演出が好きなんですよ、ゲーム音楽マニアでもありますので(笑)。まず単旋律を聴いていただいて、その後複数の楽器がワッと入ってくる、っていうのがこのゲームの中で重要な演出だと思っていますので。任天堂がコンサートをやる機会は中々ないのですが、いざやる場合は、この曲のように何か遊び要素を入れたいと思っているんです。

2083WEBさんを見ていると、最近はゲーム音楽のコンサートがとても増えていますよね。アマチュアの方はもちろんですし、プロの方も最近オーケストラ団体を作られて、皆さんがすごく熱心にゲーム音楽界を盛り上げていただいているので、私もすごくうれしいんです。そんな中、せっかく任天堂がやるなら、“任天堂にしかできないコンサートを”というのは大事にしたいポイントですね。任天堂ならではの何かをご用意したいなと思っています。

―― ほかに、今回のコンサートの聴きどころはございますか?

横田 はい。大きな聴きどころというか、「見どころ」にもなるのですが、今回は映像をたくさんご用意しています。

―― オーケストラの演奏にあわせて、映像も流されるのですね。

横田 はい。指揮者の方にはいわゆるクリック(メトロノーム的なもの)を聴きながら指揮をしていただくんです。それはなぜかと言うと、映像と演奏を合わせるためですね。1曲1曲、いろんな『ゼルダ』シリーズのメドレーになっていたりするんですけれども、そのメドレー中、たとえば「ムジュラの仮面」の曲だったら、映像も「ムジュラの仮面」のゲーム画面になっていたりして。楽曲にあわせた映像が流れるんです。いろんな『ゼルダ』シリーズを遊ばれているファンの皆さんに、ぜひご覧いただきたい映像がいっぱいあるコンサートになります。

―― おお…! それは楽しみです。

横田 コンサートは生演奏なんですけれども、“音楽と映像がシンクロしている”ところも、今回のコンサートの売りのひとつです。映像に生演奏を合わせるための信号の準備もかなり複雑にやっていますから、本番を成功させるためのリハーサルにも力が入ります。ゼルダのミュージックビデオを見ているような感覚が味わえるかもしれません。今回は映像にも力を入れていますので、コンサートにお越しいただいた方にはそちらも注目していただきたいですね!もちろん演奏も指揮も一流の方にお願いしていますので、オーケストラの迫力にもご期待ください。

⇒【後編】効果音もパワーアップ!『ムジュラの仮面 3D』の魅力を語る



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